短期と中長期では戦略が異なる!
(ポイント)
現在の状況は下落前の昨年10月の高値と以下の酷似点がある。
・貴金属相場と密接な米国の利上げへの見方
・投機筋の買いの積み上がり方
・フォワードレートのプラス転換
まずは、先週の金相場を振り返ってみましょう。
4400円を挟み50~100円の上下値幅でのもみあいになっていますが、現在の状況は昨年の10月の高値時に良く似ています。
昨年の10月までは米国の雇用統計が悪く、利上げ観測が後退していたため金相場は上昇していましたが、利上げ観測が台頭すると11月には下落していきました。
現在は、3月の利上げが見送られるとの思惑で上昇してきていますが、今後どうなるかに注目です。
実は、利上げ観測の台頭と後退は、貴金属市場の値動きと密接な関係があるのです。
NY金相場の値動きは昨年10月を大きく上回っていますが、先ほどの利上げ観測の状況のほかにも昨年10月の状況に似ていることがあります。
こちらのCFTCの投機筋のポジションと金ETF残高の推移をご覧ください。
金ETFは中国の不安などで昨年末からじわじわと増加傾向にあり、先週末は1日で19トンも増えました。
一方でCFTCの投機筋のポジションも買い越し(差引)が昨年10月の水準に迫るまで増加しています。
グラフはここ1年間の両者の動きを並べて比較したものですが、投機筋の買い越し(差引)と金ETFの残高には相関があるのがわかります。
巷では、金ETFの増加は長期の投機筋が入っている証で金相場は強気だという見方がありますが、今の状況では一概に言えません。
これまではCFTCは短期的な資金、金ETFは長期的な資金と棲み分けができていましたが、直近1年間の動きをみていると、両者が同じような動きになっているのが分かります。
CFTCの短期の投機筋は買いいっぱいの状態にあり、一転して売りに回ると金ETFも減少する可能性が高く、短期的には上値警戒で私はみています。
短期的には売り戦略に妙があるでしょう。
その他の貴金属相場でも同じような兆候が見られます。
まずは銀です。
かつてないほどに銀の買いは多く、昨年10月を上回っています。
他の貴金属に比べて銀が一番投機買いが多く、下落への警戒が必要です。
白金も昨年10月の水準にまで買い越しが増えてきています。
今後の見通し
貴金属相場は、3月の利上げ見送り論で上昇してきましたが、投機筋の買いポジションの多さが気になります。
また、金のフォワードレートも先週末にプラスへと転換してきました。
昨年11月の金相場の下落はフォワードレートがプラスに転じた翌日から始まったことを考えると、貴金属相場は高値でのもみあいの中で、投機筋の買いポジションの積み上がり、フォワードレートのプラス転換がきっかけに短期的には下落すると私は見ています。
短期戦略は売りが良いでしょう。
中長期的な展望ですが、利上げはなかなかうまくはいかずに貴金属相場は上昇するとみています。
中長期的な見方からすれば、短期的に下落して調整したところは買い場になるでしょう。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。