〇かつてない緊迫感も、金融調整は限定的〇
米国市場がレイバーデ—休日ということもあるが、北朝鮮情勢緊迫化を受けた世界の金融市場は調整色を強めたものの、調整自体は限定的だった。
振れの大きい東証マザーズ2.92%下落を除けば、シンガポール株1.41%、ギリシャ株1.19%、韓国株1.19%、日経平均0.93%、インドネシア株0.86%、スイス株0.86%、ロシア株0.80%、香港株0.76%などの下落。
国連安保理緊急会合が開催され、日米韓英仏が中心になって新たな「制裁決議」を求め、中ロが慎重姿勢と言う構図が繰り返された。
石油禁輸が焦点で、各国首脳の電話協議も活発に展開されている。
産経報道によると、9割を占めるとされる中国の石油禁輸反対の理由は、パラフィンが多く含まれる成分で、一定期間止めるとパイプが凝固する恐れがある、北朝鮮崩壊リスク、北朝鮮暴発リスク(鉾先が中国に向く)、ロシアが秘密裏に供給する可能性、石油禁輸でも北朝鮮の暴走を止められなかった場合は中国の手段が喪失する、などとしている。
9月1日、中国人民解放軍中枢の4人が拘束・更迭されたと報じられており、習近平体制と中国軍部の抗争があると見られるだけに、今は事を起こしたくないのが中国の本音と思われる。
表面上は「対話路線」で一致しているロシアとの関係が微妙であることも影響している。
たまたま、6-7日に「東方経済フォーラム」でウラジオストクを訪問する安倍首相とプーチン露大統領の会談が大きな注目点になった。
安倍首相がロシアの協力を何処まで引き出せるか、ロシアの北方領土「特区」推進で、日ロ共同経済活動は暗礁に乗り上げているだけに、北方領土交渉の期待度は大きく低下している。
ポスト金正恩体制の駆け引きまで垣間見えるか、注目される。
注目日程では、9日建国記念日、11日国連安保理決議と続く。
韓国国防省は、ミサイル発射準備の動き、別の坑道で7回目の核実験可能と発表しており、緊迫感が続くと見られる。
ただし、予想される日本越え北太平洋に向けてのミサイル発射の場合は今回と類似した反応と思われる。
一番注意したいのは、グアムに向け、電磁パルス(EMP)攻撃の真似事をした場合となろう。
北朝鮮がEMPに言及したことで、米軍の動きが一変していると観測されている。
北朝鮮情勢も絡んで、5日から再開される米議会の動向も市場の焦点になる。
ドル安の一因と見られた連邦債務上限問題は、ハリケーン「ハービー」の大規模被害への対応、北朝鮮リスクへの対応などから
危機感は薄らいでいる。
トランプ大統領がメキシコ国境の壁建設など
の主張を引き下げるかどうかが注目される。
市場の関心は減税策の行
方と思われる。
1日発表の雇用統計が下振れしたことで、年内利上げ観測は一段と後退
したが、米金利、ドルに大きな変動は無かった。
既に、織り込んだ材料
と見られたためと考えられる。
「ハービー」の影響もあって、物価動向
が次の焦点(7月CPIは1.7%、FRBの言う2%を目指すと見られれば、
10年物国債利回りには「2%の壁」の下支えが働く)。
今のところ、北朝鮮情勢が世界経済を撹乱する動きにはなく、落ち着い
た場面で見直し買いの動きが出るものと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/5号)