[東京 26日 ロイター] - 政府は26日、液化天然ガス(LNG)の利用を拡大し、市場を厚くするために、エネルギーインフラを中心に官民で100億ドル(約1兆円)を投資する方針を発表した。サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けるなど中東リスクもあり、調達先が分散しているLNGの重要性は増している。9割近い中東産原油への依存を低減させるためにも、日本はLNGの開発・利用拡大をリードしていく考えだ。
LNGの産出国と消費国の閣僚や企業、国際機関などが集まる「LNG産消会議」で菅原一秀経済産業相が1兆円の投資を表明した。同会議は2012年から始まり、今回で8回目となる。
日本は、LNGの世界最大の輸入国。調達先はオーストラリア、マレーシア、カタールなど世界に分散している。ただ、LNGの長期契約価格は原油価格連動のケースが多く、中国の消費の伸びや中東リスクなどで原油価格が変動すると、LNGの価格変動要因にもなることから、LNG市場の拡大を進める。LNGの利用拡大は、日本企業の利益だけでなく、安全保障上重要だと位置付けている。
2017年の「LNG産消会議」では、世耕弘成・前経産相がアジア需要の立ち上げに向けて官民で100億ドル規模のファイナンスを用意すること、今後5年で500人の人材育成の機会を提供することを打ち出した。この100億ドルはインドネシアのジャワ1プロジェクト、モザンビーク・プロジェクトなどで使い切ったため、今回、あらたに100億ドルの投融資を行うこととした。
また、日本政府が100%出資する日本貿易保険(NEXI)が保険を付与することで、約4500兆円ある国内外の機関投資家の資金をLNG関連の投融資に振り向けられる仕組みを積極的にアピールする。
LNGは、石油や石炭に比べてCO2排出量が少ない。天然ガスを冷却して液化したもので、体積が気体時の600分の1で、輸送・貯蔵に適している。2017年の世界の原油輸出に占める中東シェアは60%だが、天然ガスは21%に過ぎない。2017年には天然ガスの輸出に占めるシェアが1%に過ぎない北米も、2025年には12%に拡大するとみられている。
(清水律子)