[ブリュッセル 29日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、2050年までに域内の二酸化炭素(CO2)排出を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す法案を来年3月までに提出することが29日、ロイターが入手した草案文書で明らかになった。
欧州委は12月11日に同文書を公表する予定。域内の温室効果ガスの排出量を30年までに半減させる計画を来年10月までに提出することも記載されている。
草案文書によると、欧州委はEUの排出量取引制度「EU─ETS」を海運部門、さらに可能なら陸運部門にも拡大することを提案。自動車と航空機の利用を鉄道にシフトさせる取り組みなども提案した。このほか、森林保全や都市部の大気汚染観測基準の強化なども打ち出した。
温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命以降の気温上昇幅を1.5─2度にとどめることを目標に掲げているが、各国政府の取り組みは十分でないとの懸念が世界的に高まっている。
EUは気候変動対策を先頭に立って推し進めたい考えだが、加盟国間には見解の相違があり、チェコ共和国、ポーランド、ハンガリーなど石炭の依存度が高い国は50年までのカーボンニュートラル達成には反対。こうした国の賛同を得るために欧州委は石炭依存度の低下に向けた基金の設立を提案している。
EUの気候変動対策には加盟国に対する予算配分問題も関わっており、エストニア、ラトビア、リトアニア各国政府は29日に公表した書簡で、EUは石炭依存度引き下げに向けた基金の設立に加え、脱化石燃料型の経済への移行に向け「大規模な投資」を行う必要があるとし、3カ国に対するEU予算配分が少ないことは環境政策上の目標達成の足かせとなるとの見解を示した。
欧州委は来年6月に環境に優しい経済への移行を巡る財政計画を公表する。