[ロンドン 20日 ロイター] - 海運業界が国連の二酸化炭素(CO2)排出削減目標を達成するには、2050年までに代替エネルギーの開発投資が少なくとも1兆ドル必要になるとの調査・研究結果が20日公表された。
世界全体のCO2排出量に占める国際海運の割合は2.2%で、海運業界はCO2やその他の汚染物質の排出削減圧力に直面している。世界貿易の約90%が船舶による輸送に頼っている。
国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は、船舶からの温暖化ガスの排出量を2050年までに08年比で半減させる目標を掲げている。この目標を達成するには、温暖化ガスの排出がゼロか低水準の燃料に加え、よりクリーンな技術を用いた新たな船舶設計の開発が必要になる。
今回の研究は初めてコスト面にも踏み込み、2030年から2050年に累計で1兆━1兆4000億ドル、年平均で500億━700億ドルの投資が必要になると推定している。
海運業界が2050年までにCO2排出量をゼロにする場合、20年間にさらに4000億ドル前後が追加で必要になり、投資総額は1兆4000億━1兆9000億ドルとなる。
研究に関わったロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)のエネルギー研究所のトリスタン・スミス氏は「われわれの分析は、新たなゼロカーボン・システムに足並みをそろえるための破壊的で急激な変化を示唆している。化石燃料などのエネルギー資源は使われなくなるか、大幅な改良が必要になる」との見通しを示した。
海運業界は過去10年以上にわたって市況の悪化に見舞われているほか、欧州の金融機関が相次いで業界から融資を引き揚げたため、資金不足に陥っている。
この研究結果は、UCLや、世界中の専門家で構成するエネルギー移行委員会などがまとめた。