[20日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)の元副総裁で、中国清華大学・国家金融研究院の朱民院長は20日、中国経済が今年、現在の成長ペースをおおむね維持することは可能との認識を示した。
朱氏は世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に合わせて開催されたロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで、年間6%の成長率は「極めて妥当」と指摘。さらに、高水準の債務を踏まえ、国内の金融政策は年内、中立的になると語った。
さらに、米中の「第2段階」の通商交渉の今後の進展は米国にかかっていると述べた。
<2020年の中国経済の見通しおよび国内総生産(GDP)伸び率予想は>
20年は良好な1年となる可能性がある。経済は安定化し、通商合意や技術革新が効果を発揮し、投資を支援するだろう。中国にとって6%の成長率は極めて妥当だ。中国がこの成長レベルを維持することは現時点で可能だ。高水準にある債務に慎重を期し、中国の金融政策は中立的にとどまる見通しだ。財政イニシアチブも引き続き支えとなる。
<20年にどのような政策イニシアチブが取られる可能性があるか>
中国はすでにインフラ投資の分野で多くの取り組みを行ってきたが、高速電車や地下鉄などへの投資余地は存在する。これは中国では比較的最近確立しつつあるインフラだ。
<インフレ加速にかかわらず、中国人民銀が最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)や市中銀行の預金準備率(RRR)引き下げを継続するか>
利下げの必要性がかなりあるとは考えていない。RRR引き下げの余地は存在し、金融政策の効果が円滑に波及すれば、流動性は実体経済に流入するだろう。総じて人民銀は政策を維持するだろう。
<今年の中国債券市場の動きをどう見るか。天津物産集団の債務問題などを受け、投資家のセンチメントが悪化する可能性を想定するか>
昨年、中国債券市場への資金流入は好調だった。今年は昨年から拡大すると予想する。米連邦準備理事会(FRB)が利下げモードにあり、市場で年内の追加利下げが予想されるなか、金利格差は引き続き中国に有利となる。
<米中貿易摩擦について。第1段階の合意を受け何を想定するか>
米中は双方にとって最適とされる方策を見いだすことに注力している。第1段階の合意は貿易と知的財産権の保護に焦点が置かれた。第2段階の交渉では技術のほか、米国で学ぶ中国人学生の減少、中国企業のブラックリスト追加など、多岐にわたる問題が協議される余地がある。不透明性を解消し、明確な境界線を定めることが重要だ。
第2段階の合意が署名されるかどうかは分からず、ボールは米国側のコートにある。今年は米大統領選挙も行われる。しかし、われわれは協議の開始を望んでいる。大統領選前であっても、協議を持つことは協議しないよりも望ましいだろう。