[シンガポール 21日 ロイター] - 関係筋によると、金融機関や商社がアジアにおける事業展開を縮小させている。原油価格の下落のほか、シンガポールの燃料取引大手ヒン・レオン・トレーディング(HLT)で巨額損失隠しが発覚したことが背景にある。
シンガポール警察は21日、HLTの創業者が数億ドルに上る損失隠しを会社に指示したという報道を受け、同社に対する捜査を始めたことを明らかにした。
関係筋によると、HLTの損失発覚と年初来の原油価格急落を受け、複数の銀行が石油商社向けの与信を絞るとともに、既存融資の見直しも進めているという。
HLTへの大口融資先でもある銀行筋2人は、アジアの商社に対する全ての融資と新規の信用枠供与について、審査が厳しくなったと明かす。そのうち欧州銀の関係筋は、原油価格の急落でさらに破綻企業が出るとの懸念があると述べた。
また別の銀行筋は、HLTの巨額損失問題は銀行に融資枠を削減させる「引き金」になった、と指摘した。
関係筋によると、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ) (AX:ANZ)は、コモディティー向け融資について、現在の顧客以外に新規貸し付けを行わない方針を決定した。ANZはコメントを拒否している。
シンガポールを拠点とする石油商社は、銀行が、取引相手からの信用状(LCs)を必要としない高リスクの信用枠を削減したと指摘する。
さらに別の銀行筋は、コモディティー向け融資方法を見直しているとし、特に傘下に石油生産や精製子会社を持たない純粋な商社に対しては、融資を実行する前に、取引の流れを明確に説明するよう求めるとしている。
また商社側も、信用枠のタイト化とカウンターパーティーリスク(取引相手の倒産リスク)の上昇を受け、事業活動を縮小した。
これまでの原油価格下落局面と異なり、新型ウイルス感染拡大抑制に向けた制限措置で燃料需要も大きく打撃を受けていることから、石油企業の破綻懸念も高まっているためだ。
シンガポールに拠点を置く商社幹部は言う。「カウンターパーティーリスクはかなり高い。この状況で誰が取引しようと考えるだろうか。経済は以前のように早期に回復はしないだろう」