[モスクワ/ロンドン 29日 ロイター] - 原油先物相場が過剰供給不安や新型コロナウイルス流行による需要の先行き不透明感に覆われる中、世界各地で生産される原油の現物価格は、中国とインドの旺盛な需要に押し上げられている。貿易業者の話で明らかになった。
現物市場で中国の国有および独立系の石油精製業者は最も積極的な買い付けを行っている。2021年序盤の輸入枠を確保し、今年の年初からたびたび問題となっていた港の混雑が緩和したためだ。
これを受けて、ここ2週間でロシアのウラン原油やノルウェーの「ヨハン・スベルドラップ」、カスピ海の「アゼリBTC」、「CPCブレンド」などの現物でプレミアム(上乗せ幅)が拡大した。
国際的な貿易会社の関係筋は「原油供給業者にとって中国が再び期待の星になっている。コロナ危機の渦中にある欧州とは異なり、経済の復興が最も早かった」と述べた。
2人の貿易業者によると、ロシア産ウラルの北海ブレント原油現物価格に対する上乗せ幅は3カ月ぶりの水準に拡大。中国が買い付けた分の出荷は近く増加する可能性がある。
別の貿易筋は「中国は地中海原油市場でほぼ不在となっていたが、今は復帰して、問い合わせを行っている。11月末以降の積み出し分について買い付けを検討しているのは明らかだ」と述べた。
インドもまた買い付けへの意欲を強めている。インドの製油所の原油処理量は9月に6カ月ぶりの高水準に達し、この結果、ナイジェリア産のライト・スイート原油は北海ブレント現物に対し、マイナス50セントの割引(ディスカウント)からプレミアムに転じた。
別の貿易業者によると、中国の買い付けによってアンゴラ産原油「ダリア」は先月上旬にブレント現物と等価だったが、今では75セントの上乗せがあるという。
ただ、新型コロナウイルスの世界的流行下では現物価格の上昇は短期に終わり、先物相場には波及しないかもしれない。28日はオマーン原油とドバイ原油の指標価格が下落しており、需要が後退している可能性を示した。