[ウィーン 9日 ロイター] - 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は9日、2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故の影響に関する最新の報告書を発表し、14年の前回報告書と同様に、被ばくでがん発症率が目に見えて上昇する可能性は低いと結論付けた。
また、子どもの甲状腺がんの増加は、スクリーニング検査の精度の高さが影響したにすぎないとした。
原発事故を引き起こした東日本大震災発生から3月11日で10年を迎えるのを前に、27カ国の科学者52人で構成するUNSCEARが19年末までのデータに基づき報告書をまとめた。
それによると、「市民の被ばく量の推定値は前回の推定値から減少したか同等」であるため、「被ばくに直接起因する健康への影響が将来的にはっきりと表れる可能性は低いと引き続き考える」とした。
一方、子どもの甲状腺がんが増加していることについては、11─15年の期間に福島地域の18歳以下30万人強が高精度の超音波装置によるスクリーニング検査を受けた際は、がんと判定あるいはがんの疑いが指摘された人が116人に上ったと説明。
ただ、福島原発事故による被ばくの範囲に入らない3県で行った同様の装置を使った検査でも、がんの可能性を示す甲状腺の嚢胞(のうほう)と結節が福島と同じ割合で見つかったという。
このため、被ばくした子どもの甲状腺がんの大幅増加は「被ばくのせいではなく、超高精度のスクリーニング検査がもたらした結果だ」と結論付けた。