[オスロ 31日 ロイター] - ノルウェー政府は31日、石油・ガス会社に対する課税の見直しを提案した。一部の優遇措置を廃止する。発表は予想外で、選挙を控えて石油・ガス産業の将来を巡る議論が一段と白熱している。
議会を通過すれば、一部のエコノミストが石油・ガス会社の過剰なリスクテークにつながると指摘している税額控除が廃止されるほか、探査費用の還付も削減される。
サンネル財務相は「今回の変更で、課税条件は厳しくなる。投資への影響は相対的に中立だ。企業が枠組みの条件を予想できるようにしていく」と述べた。
ノルウェーは、西欧最大の石油・ガス生産国。ノルウェー大陸棚では、エクイノール、シェル、トタルエナジーズ、コノコフィリップス、アケルBP、ルンディン・エナジーなどが操業している。
財務省によると、石油会社に課税する特別税率は事実上、現在の56%から71.8%に引き上げられるが、全体の税率は78%で据え置く。
また、探査費用の還付も段階的に減らす。還付は特に中小企業の財務リスクを減らし、探査を奨励する目的で2005年に導入された。
<予想外の発表>
議会は昨年、新型コロナウイルスの流行で原油価格が急落する中、石油会社が開発を続けられるよう一時的な優遇措置を導入した。
これを受け、新規の油田・ガス田の開発が相次いだほか、国内の下請け会社の雇用も維持されたが、コスト負担が企業から納税者にシフトしたため、過剰投資のリスクが指摘されていた。
国営石油会社エクイノールの広報担当はロイターに、今回の発表について事前に知らなかったとし、「広範な税制変更で、内容を把握するのにさらに時間が必要だ」とコメントした。
一部のアナリストも、全体としてどのような影響が出るのか、現時点で不透明だと指摘している。
スペアバンク1マーケッツのアナリスト、テオドール・スベェーン・ニルセン氏は「税額控除が投資額の89.6%から78%に減らされるようだ。投資意欲にどのような影響が出るかは、割引率に左右されるだろう」と述べた。
環境保護団体は、税制変更を歓迎。グリーンピース・ノルウェーの代表は「気候に悪影響を及ぼす採算の取れない探査を減らしていくという必要不可欠な措置が始まることを意味する」と述べた。
環境保護団体や一部の野党議員は、温室効果ガスの排出を抑制するため、ノルウェー大陸棚での探査を全て中止すべきだと訴えている。
最新の世論調査によると、中道右派政権は9月12─13日の議会選で敗北する見通し。気候変動問題やノルウェーの石油・ガス産業の将来が争点となっている。