[ブリュッセル 7日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、ロシアから輸入する天然ガスの価格の上限を設けることを提案する。フォンデアライエン欧州委員長が7日、明らかにした。
ロシアのプーチン大統領はエネルギー供給停止で対抗する構えを示していることから、欧州のガス価格が一段と上昇し、企業や家計に対する政府の支援額が一層膨らむ可能性がある。
フォンデアライエン委員長は記者団に対し「ロシアから輸入する天然ガスの価格の上限設定を提案する。ロシアのプーチン大統領によるウクライナでの非道な戦争の資金源を断たなければならない」と述べた。
欧州委はフォンデアライエン氏の計画を説明する文書で、EUが価格上限を設定すればロシアが一段の供給削減を行う可能性があると認識した上で、「価格上限を設定しなくても、すでに大きな混乱が起きている」と指摘。現在の市場価格を下回るが、生産コストを上回る水準に上限を設定すれば、ロシアは欧州への供給を継続する可能性があるとの見方を示した。
プーチン大統領はこの日、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで行った演説で、ロシア産エネルギーに上限価格が設定されれば、ガス・石油供給を停止すると表明している。
それでもEUは、ロシア産ガス価格の上限設定を進めるほか、天然ガス以外で発電された電力の料金にも上限を設ける方針だ。
フォンデアライエン氏が説明したEUの電力・ガス価格引き下げ計画によると、EUはガス以外で発電する電力事業者の利益に上限を設け、家計や企業への支援に回すことを検討している。
欧州の電力価格は通常、ガス火力発電業者が設定しており、利益上限案は風力や原子力、石炭火力などガス高騰の影響を受けていない電力の価格を引き下げる狙いがある。
フォンデアライエン氏は、利益が大きく増加している石油・ガス企業も「連帯税」の支払いを求められると述べた。
このほか、各国にピーク時間帯の節電を求める措置や、多額の担保を求められている電力会社への流動性支援なども提案する方針。
EUは9日にエネルギー相会合を開き、提案について協議する。
関係筋が7日にロイターに明らかにしたところによると、ガス価格の上限設定に反対してきたオランダは、ロシア産ガスを対象とした上限案は支持する見通し。
一方、チェコの閣僚は、ロシア産ガス価格上限案を9日の会合の議題から外すべきとの考えを示した。