[ニューヨーク 21日 ロイター] - 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は21日、米ニューヨークで、ウクライナ南部ザポロジエ原発周辺に安全管理区域を設ける計画を諦めるつもりはないと明言した。国連一般総会の傍ら、記者団の取材に応じた。
ザポロジエ原発は現在ロシア軍の占拠下でウクライナ側の職員が運営している状況。相次ぐ砲撃で6基ある原子炉の近くの複数の建物が損傷するなどしており、原子炉の冷却に必要な電源が喪失すれば、たとえ原子炉が全停止していても壊滅的な被害が発生する恐れがある。ウクライナはロシアの攻撃を非難し、ロシアはウクライナが攻撃していると主張している。
グロッシ氏は「最悪の状況になっても外交(努力)を止めてはならない。われわれは投げ出して手を引くことなどできず、この事態の解決につながる出来事が起きると期待している。そうなるように実務的で現実味を持ち、具体的な形がある提案をするのがわれわれの責務だ」と強調した。
ただ、現地の状況は砲撃が続いてさらに悪化していると指摘。最終的には非武装地帯(DMZ)を実現させることが目標だとしつつ、とりあえず安全管理区域を設置する技術的条件の協議に入っていると明かした。焦点は区域の範囲やIAEA職員の役割など。同原発には現在2人のIAEA職員が訪問後もそのまま駐在している。
またグロッシ氏は、協議加速のため近くウクライナとロシアを訪問したい考えも示した。その上で「これは何週間、何カ月もの余裕がある条約の交渉ではなく、可及的速やかに決めなければならない」と訴えた。
グロッシ氏は同日、ニューヨークを訪問中のウクライナ当局者やロシアのラブロフ外相と個別に会談した。