[ワシントン 11日 ロイター] - 米国や主要7カ国(G7)が策定したロシア産石油の海上輸送での取引価格上限設定について、英米著名大学の経済学者16人が11日付で構想を後押しする書簡をイエレン米財務長官に送り、買い手の価格交渉力を強めロシアの大幅減収につながるはずだとの見解を打ち出した。
共同署名したのは米マサチューセッツ工科大(MIT)スローン経営大学院やハーバード大、シカゴ大、カリフォルニア大バークリー校や英オックスフォード大などのエコノミスト陣。
書簡は「すべての取引が価格上限を下回ることはないにしても、上限の存在がロシア産石油を買う民間企業や公的組織の価格交渉力を大きく高める」と予想。上限が設定されてもロシアが現在の産油量を維持する経済的動機はなくならないが、ロシアの収入は減ることになると指摘した。
書簡によると、北海ブレント原油先物が1バレル=20ドル近くだった2020年4月でさえ、これがロシアの既存油田の多くないし大半の生産コストを上回る価格だったため、ロシアは世界市場への石油供給を継続。これに対し、現在のブレント価格は約96ドルもあるとした。
ロシアはウクライナ侵攻に伴う制裁の影響などで石油を値引きして売らざるを得なくなっていたが、最近数週間はこの割安さが低減していた。書簡は「価格上限が実現すれば実質的にロシア産石油の割安水準が制度化され、石油というロシア政府の第一の収入源が目減りすることになる」と指摘した。
G7は9月、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁として価格上限設定に合意。欧州連合(EU)も先週、上限設定を含めた対ロ追加制裁を承認したが、実現にはもっと詰めの作業が必要だとしていた。米政府当局者は11日、そうした作業はまだ続いていると述べていた。