[ベルリン 17日 ロイター] - ドイツ対外情報機関の連邦情報庁(BND)のブルーノ・カール長官は17日の議会公聴会で、中国海運企業がドイツで最重要な港であるハンブルク港のターミナルの1つに投資しようとしていることについて、警戒が必要だと訴えた。
カール氏は重要なインフラへの中国の資本参加には極めて危機感を覚えるべきだと主張。港湾が重要インフラと見なされる以上、そうした投資のいかなる可能性も極めて慎重に審査されるべきだとの見解を示した。第5世代(5G)移動通信システムなどの技術や経済的影響力を使って中国寄りの考え方をドイツに植え付けようとする狙いを想定すべきだとし、いざ両国間で政治的に不一致が生じる際に、そうした策略が政治的影響力の行使に効果を発揮することになるとした。
国内情報機関である連邦憲法擁護庁(BfV)のトーマス・ハルデンワンク長官も公聴会で、ドイツの重要インフラの権益を中国が保有することになると、世論形成への妨害工作や誘導の道が開かれる可能性があると訴えた。同氏はロシアのウクライナ侵攻のようなやり方が「嵐」だとすれば、中国の手口は「気候変動」のように何年もかけて進行するやり方だと説明した。
2人とも立場的に資本参加の可否を直接評価することは避けた。
ハンブルク港を巡っては3つのターミナルの1つに対し、中国遠洋運輸(COSCO)が権限を取得しようとしている。議会筋によると、市民の権利擁護を掲げる緑の党のハーベック経済相の下、同省は承認に否定的。一方で社会民主党(SPD)のショルツ首相の首相府は出資受け入れに好意的という。中国側はドイツに対し、両国の経済関係を政治問題化すべきでないとし、国家安全保障の名目で保護主義を採用しないようにとも主張している。
中国はドイツにとって最大の貿易相手国になっているが、中国依存をいかに低減させるかの問題は論争の種。特にロシアのウクライナ侵攻で、強権的な専制主義の色合いを強める国家への依存の危険が改めて意識されている。