[ワシントン 9日 ロイター] - 米下院の監視・改革委員会は9日、気候変動問題について大手エネルギー業界に提出させた社内文書などの分析結果を公表し、多くの企業は気候変動対応を公約しながらも最悪の影響を防ぐための実行が不十分だと批判した。
同委員会の民主党議員らは昨年に業界幹部の公聴会に続き、電子メールなどの内部文書の議会提出を業界幹部に指示。その結果、多くの文書から、大手エネルギー企業の温室効果ガス排出量削減に向けた協議などが実態は油田・ガス田を中小企業に売却ないし譲渡することで、排出量を単に別の企業に振り向けるだけという状況が判明したという。
分析結果によると、英BP傘下の陸上油田・ガス田事業BPXエナジーは2019年、当時経営幹部だったジャック・コリンズ氏が社内メールで別の企業の幹部に対し、ソーラーポンプ(太陽光発電で動かすポンプ)プロジェクトを通じて排出量を削減するつもりだったと説明した上で、資産見直しの結果、そうしたプロジェクトはほぼ全て打ち切ることを決めたと明かしていた。
シェル広報担当者の社内メールはカナダのオイルサンド資産の売却に関して、米国などの「文明化した社会の国」で高炭素エネルギー資源へのアクセスを制限されても、規制がずっと緩い別のどこかの国で需要の穴埋めが可能だとの見解を示していた。
米国石油協会(API)のマイク・ソマーズ会長の内部メールは化石燃料掘削の「商業認可」をさらに確保するチャンスはあると主張。油田やガス田でメタンを燃やす方法や二酸化炭素回収・貯留技術などで排出量をより減らせば、もっと認可を受けることは可能だと記していたという。
下院監視・改革委員会のマロニー委員長は、業界幹部が公聴会では気候変動の喫緊の課題解決に貢献するように石油・ガス事業を運営していると証言していたにもかかわらず、取り組みは実態があまりにも乏しいと指摘。今回の新たな証拠で企業の気候変動対応についての約束が不適切なばかりか、人々の生活や命よりも利益を優先する姿勢が鮮明になったと強調した。