[ヨハネスブルク 9日 ロイター] - 南アフリカの国営電力会社・エスコムは過去最悪の計画停電を続けており、ラマポーザ大統領は9日、自国の深刻な電力不足について経済と社会構造に対する存続に関わる脅威をもたらすとし、国家的な「災害事態」を宣言した。
昨年は停電発生日が200日を超え、今年は年初から1日も欠かさず停電している。危機の原因と、なぜここまで修復が難しいのか、以下にまとめた。
◎発電所の老朽化
エスコムの石炭火力発電所は大半がアパルトヘイト(人種隔離政策)時代に建設され、老朽化して故障を繰り返している。総発電能力は4万6000メガワットだが、往々にしてその約半分が故障か修理で使えない。
白人支配体制の終了後には電気が通った家庭や企業が増えたにもかかわらず、需要を満たすだけの新規発電所が建設されていない。
2000年代終盤にクシレとメドゥピという2つの巨大な石炭火力発電所の建設許可が下りたが、建設の遅れや予算オーバー、技術上の欠陥などに見舞われている。
◎汚職と犯罪
エスコムには汚職と犯罪もつきまとう。汚職審理のために2018年に設置された陪審は昨年、2009年から9年間続いたズマ前大統領時代に、エスコムで経営の失敗や「汚職慣行の文化」がまん延したと指摘した。ズマ氏は不正を否定している。
現在のラマポーザ政権下で任命されたエスコムの現経営陣は、同社が現在も組織犯罪的な行為の犠牲になっていると主張。発電所の設備が故意に破壊されたり、石炭や軽油、銅ケーブルが盗まれたりするなどの事例を挙げている。
政府は昨年12月、犯罪組織が活動しているとしてエスコムの発電所6カ所に軍を派遣した。同社は今年1月、間もなく退任するアンドレ・ドゥ・ルイター最高経営責任者(CEO)が毒を盛られた疑いで警察が捜査に入っていると明かした。ルイター氏は汚職の取り締まりに乗り出していた。
◎再生可能エネルギーへの懐疑論
ズマ政権下では、民間企業の再生可能エネルギーを電力網に参入させる計画が何年間も凍結された。
ラマポーザ大統領は官僚的な制約を取り払って、独立系発電企業からの再生可能エネルギー供給を増やすと約束している。だが、南アは今も電力の大半をエスコムの石炭火力発電に頼っている状態だ。
労組代表や与党・アフリカ民族会議(ANC)の有力議員の一部は、再生可能エネルギーを導入すると石炭生産地域で大量の失業者が出るとの懸念から、導入に今も懐疑的だ。
マンタシェ鉱物資源・エネルギー相は2021年、クリーンエネルギー移行を巡ってエスコムのドゥ・ルイターCEOとの間で口論を繰り広げ、移行は「経済的な自殺」だと述べた。
◎財務が悪化
エスコムは、政府の支援なしには返済できない約4000億ランド(226億6000万ドル)の負債を抱え、財務が危機的状態にある。
地方政府に数百億ランドの貸しがあり、国のエネルギー当局がコストを回収できるだけの料金水準を認めてくれないと主張している。
ゴドンクワナ財務相は、今月公表する2023年度予算でエスコムの財務建て直しの一環として、政府が同社債務の3分の1ないし3分の2を引き受ける計画を発表する見通しだ。
(Olivia Kumwenda-Mtambo記者)