麻生財務相は22日の閣議後会見で、この日決定した2017年度当初予算案に関し、外為特会の剰余金見込み額を一般会計に全額繰り入れても「影響は大きくないと判断した」と語った。
民進党など野党側はこの発言を厳しく批判している。
民進党のある議員は「平成22年12月、財務省は外為特会の剰余金については当面、保有資産の30%以上を留保すると決めたのに、来年度予算では、1円も留保することなく全額一般会計に繰り入れることにしている。
約束破りだ」とツイートした。
2017年度予算案は、外為特会の剰余金見込み額2兆5188億円を一般会計に繰り入れて財源を確保した。
全額繰り入れは違法ではないが、2011年度以来6年ぶりの措置となる。
外為特会の運用目的については、「我が国通貨の安定を実現するために必要な外国為替等の売買等に備え、十分な流動性を確保することを目的とする。
」と定められており、基本原則については、1)外為特会保有外貨資産は安全性及び流動性に最大限留意した運用を行うこととし、この制約の範囲内で可能な限り収益性を追求するものとする。
2)金融・為替市場へ撹乱的な影響を及ぼさぬよう最大限配慮しつつ運用を行い、必要に応じ関係する通貨・金融当局と密接な連絡を取るものとする。
市場関係者の間では、政府が最近における円安を特に問題視していない理由について、外為特会の剰余金との係わり合いを指摘する声が聞かれている。
日銀による米国債購入観測もこの延長線上にあるとみられている。
米国が利上げを行えば米国債の表面利率も上昇し、理論的には特別会計における金利収入(歳入)が増えることになる。
ただし、政府・日銀による「円安放置」は、外為特会の運用目的の基本原則のひとつである「金融・為替市場へ撹乱的な影響を及ぼさぬよう最大限配慮しつつ運用を行う」の方針に反するおそれがある。
また、円安・ドル高の流れが急変した場合、膨大な含み損が発生するリスクもあることも忘れるべきではない。