[ワシントン 30日 ロイター] - 世界銀行は30日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、東アジア・太平洋地域(EAP)途上国と中国の成長率は今年、大幅に鈍化するとの見通しを示した。
世銀は最新の経済見通しで、状況が急速に変化する中で正確な予想は困難とした上で、EAP途上国の2020年成長率は、19年に見込まれる5.8%から基本シナリオでは2.1%、下限シナリオではマイナス0.5%に鈍化するとした。
昨年12月下旬に新型コロナが発生した中国の成長率は、19年の6.1%から基本シナリオで2.3%、下限シナリオで0.1%に減速するとした。
世銀は同地域について、「破壊的で相互に補強し合う事態」に直面しており、「深刻な経済的苦痛を回避できる国はないようだ」と指摘。各国はパンデミックの直接的影響を軽減するため、医療サービスの機能向上に投資し、疾病手当の補助金支給など的を絞った財政措置を講じるべきだとの見解を示した。
「パンデミックの封じ込めができた場合、持続的な回復が可能になるだろうが、見通しに対するリスクは金融市場のストレスを踏まえると引き続き高い」とした。
またパンデミックは、世銀が1日当たり所得5.5ドル以下と定義する貧困層に深刻な影響を与えると指摘。基本シナリオでは、2020年に貧困層から抜け出す人がパンデミックによって約2400万人少なくなるとした。経済状況がさらに悪化した場合、貧困層は約1100万人増加する可能性があるという。
従来予想では20年に3500万人近くが貧困層を抜け出すとされていた。この予想には中国の2500万人超が含まれる。
世銀は域内の各国に対し、医療用品・サービスの供給拡大や、危機後の金融状況の安定確保に向け、国際協調や国境を越えた官民パートナーシップの強化も目指すよう促した。
また、家計消費の促進や直接打撃を受けた企業の支援に向け、信用状況を緩和するべきだとした。