[ワシントン 15日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は15日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、新型コロナウイルス感染拡大により、米国の経済活動は「全ての地区で突然、急激に落ち込んだ」とし、米企業が大打撃を受けたとの見方を示した。
今回の地区連銀報告の情報は大半が3月に収集されたが、4月第1週の数日も対象期間に含まれた。この期間に、新型ウイルスのリスクが不安視された時期から全国的に外出制限措置が導入され何百万人もの失業者が出た時期へと移行した。
地区連銀報告は「(感染拡大抑制に向けた)ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)と業務停止義務により、娯楽や宿泊・飲食店、必需品以外を扱う小売業が最も大きな影響を受けた」とした。
その上で「全ての地区で先行き見通し不透明感は極めて高いとの報告があり、多くの地区で状況は向こう数カ月で悪化するとの見方が示された」とした。
今回の地区連銀報告書では新型ウイルス、および新型ウイルスにより引き起こされる感染症「COVID-19」の言及は合計で93カ所あった。
FRBは3月上旬以降、金融市場の流動性を下支えし、企業や個人への資金の流れが途絶えないよう、かつてない規模の支援策を導入。金利はゼロ付近まで切り下げ、大規模な資産買い入れプログラムを再開するなど、さまざまな対策を打った。
先週には、中小企業を中心に最大6000億ドルの融資を可能にする「メインストリート」プログラムを発表。ただクオールズ副議長は10日、機能するまでに2、3週間かかると述べた。
米政権は小企業向けに3490億ドル規模の返済免除条件付き融資を提供。ただ、2週間近く前に発動したにもかかわらず、支給が遅いことが障害となっている。14日に公表されたデータによると、最大の融資を受けている部門は建設業と専門サービス、製造業だという。
<全地区で広範な打撃>
地区連銀報告書は全ての地区が、新型ウイルスによって深刻で広範に及ぶ打撃を受けたと報告した。
フィラデルフィア連銀は「被害を逃れた部門はない」と指摘。「失業者の急増によって採用がしやすくなったことはない。感染への不安や育児のため、人々は自宅にいる。価格は下落傾向にあるが、賃金の見通しは不確かであるほか、先行き不透明感から企業の見通しは暗い」とした。
クリーブランド地区では専門・業務サービス業界で、顧客が新規計画の導入を延期したり、既に着手している計画を中止したりしたと複数の企業が報告。
サンフランシスコ地区はテレビ・映画制作が滞り、娯楽業界の解雇が増えたと指摘した。
リッチモンド地区は、ホテル・ホスピタリティ業界で約90%の人員削減が報告されたとした。
FRB当局者やエコノミストは、ソーシャル・ディスタンシング措置が解除され企業が事業を再開した際、どのくらいのペースで経済が持ち直すかを推し量るため、増大する米企業への打撃を注視している。
企業が債務返済に対応するために投資や採用を控える時期が長引くことや、外出制限措置が解除された際に再び感染が拡大するという不安から個人消費が低迷し続けることが主要な懸念事項となっている。
エコノミストは米経済が第1・四半期に数十年来の大幅な落ち込みを記録するとみている。国際通貨基金(IMF)は14日、20年の世界の成長率が3.0%落ち込むとし、1930年代の大恐慌以来で最悪の景気後退になるとの見方を示した。
15日発表された3月の米小売売上高は過去最大の落ち込みとなった。個人消費は米経済の3分の2以上を占める。また3月の鉱工業生産統計によると、製造業生産は1946年以来の大幅なマイナスだった。
*内容を追加しました
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