[パリ 5日 ロイター] - フランス国民議会(下院)は5日、新型コロナウイルスワクチンの接種を事実上義務化する法案の審議を一時中断した。マクロン大統領が4日遅くに報じられたパリジャン紙のインタビューで、法案を巡り未接種者の生活を面倒にして「うんざりさせ」、接種に追い込みたいと述べたことに野党が反発した。
法案が成立すると、接種証明がなければ飲食店や映画館などの利用ができなくなる。マクロン氏はインタビューで未接種者を無責任と非難し、市民と見なされるに値しないとも語った。
野党、共和党のジャコブ党首は議会で「大統領がそんなことを言うものではない」と批判。「接種証明には賛成だが、国民をうんざりさせることを狙った法案には賛同できない」と攻撃した。
一方でアタル政府報道官は医療従事者やコロナ禍で打撃を被っている企業を引き合いに、「今日、(こうした人々を)うんざりさせているのはだれだ。それはワクチンを拒否している人々だ」と述べた。
カステックス首相も接種を終えた人々は未接種者に「憤慨している」と述べ、マクロン氏の発言を擁護した。
フランスでは12歳以上の9割近くが新型コロナワクチンの接種を少なくとも1回終えている。大統領選を4月に控えるマクロン氏がこうした状況を踏まえ、有権者の心をつかむとことを計算して発言した可能性があるとみられている。
パリ在住の年金生活者の男性(89)はマクロン氏の発言について、「彼は正しい」とし、「ワクチンに反対している人々は危険性を理解して接種を受けるべきだ」と語った。
ただ、営業職の女性(25)は、マクロン氏が「うんざり」を表現するのに下品な俗語を使ったとして、「賢明ではない」と批判的だ。
15日の施行を目指していた法案について、政府筋は日程が多少ずれ込んでも今月半ばごろには施行するとの見込みを変えていない。