[シドニー 19日 ロイター] - オーストラリアのモリソン首相は19日、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染拡大に伴い不足している労働力を補うため、外国人旅行客にオーストラリアに来て働いてほしいと呼び掛けた。
首相はテレビ会見で、政府は今後12週間以内に入国するバックパッカーや学生に対し、ビザ申請費用630豪ドル(453米ドル)を免除すると発表。「オーストラリア各地を回ると同時に、農業やホスピタリティー業界など労働力が不足している現場で働いて助けてほしい」と訴えた。
オーストラリアでは19日昼時点でコロナ感染による新たな死者が67人、新規感染者は8万人近くに上った。前日には77人の死者が報告され、過去最多を更新した。
ポール・ケリー首席医務官はこの日、向こう数週間でさらに死者が増える可能性があると発言。公共放送ABCに対し、「これまでに見られたように、これからも主に高齢者や慢性疾患を持つ人々に死者が出てくるだろう」と述べた。
記録的な感染水準となる中、医療システムが逼迫するビクトリア州は病院に対する緊急ステータスを引き上げ、19日正午から通常は自然災害や大規模な死傷者が出た場合に発令される「コード・ブラウン」ステータスに移行。さらに、隣接するニューサウスウェールズ(NSW)州の看護師らは19日、シドニーの大病院で集会を開き、スタッフ不足に抗議した。
感染者数の多さは病院の機能を圧迫しており、18日時点で入院患者は5025人。1カ月前は759人だったが、この2週間で約2倍に増えた。
また、企業でも体調不良や隔離が必要な従業員が相次いでいるため労働力不足が深刻になり、商品の供給が間に合わないなど景気回復を阻む要因になりつつある。
モリソン首相は、オミクロン株の感染拡大のピークは「現時点か、あるいは数週間以内に訪れる」と述べる一方、オーストラリアの致死率は世界で最も低い水準にあるとも指摘。「国内の医療システムはかなり逼迫する中でも持ちこたえている」と評価した。