[東京 23日 ロイター] - 日銀は23日、新型コロナウイルス禍での資金繰り支援策が企業の財務にどのような影響を及ぼしたかをテーマにした分析リポートを公表した。新型コロナの感染が広まった2020年度も1990年代に問題視されたような「ゾンビ企業」は増加していないと結論付けた。
新型コロナの感染拡大を受け、政府・日銀が資金繰り支援策を積極的に打ち出した結果、企業の倒産件数が低水準に抑制された一方で、生産性が落ち、市場から退出すべき企業までが存続しているとの批判が政界などから指摘されてきた。
リポートはまず先行研究を分析。「ゾンビ企業」の定義を「業績が悪くて回復の見込みがないにもかかわらず、銀行などの支援によって存続している企業」とし、支払い金利や借入金、支払い能力、企業年齢の3要件を3年連続で満たすことをゾンビ企業の定量的な要件として分析を行った。
その結果、ゾンビ企業比率は、バブル崩壊を受けて1990年代前半に大きく上昇した後、不良債権処理の進展に伴って低下し、2000年代以降は低水準で推移。コロナが急拡大した20年度も低水準を維持し、増えなかった。
3要件に1年でも該当した企業の比率を見ると、大企業・中小企業ともにコロナ拡大後に急上昇した。しかし、四半期決算が利用な大企業について、四半期ベースで3要件の該当比率を見ると、コロナが拡大した当初の20年4―6月期に比率が急上昇したものの、7-9月期以降は感染拡大前の水準に低下した。リポートは「『業績が悪くて回復の見込みがない』という状態に陥った先が急増している兆しはみえない」と指摘した。
(和田崇彦)