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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆当面、貿易戦争の影響は限定的◆

発行済 2018-08-12 10:05
更新済 2018-08-12 10:20
【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆当面、貿易戦争の影響は限定的◆
〇7月中国統計異変に至らず、当面の影響は限定的か〇
相手国があるので、中国統計のなかでは貿易統計は比較的正確と言われるが、一週間程度の早さで発表される。
注目の7月統計は、7月6日からの米国との高関税合戦開始の影響が注目された。
結果、ドル建て輸出は前年同月比+12.2%(市場予想+10%)、駆け込み輸出があったと言われた6月の+11.2%から加速した。
ドル建て輸入は同+27.3%、乗用車関税を25%から15%に引き下げ(米国は25%上乗せ)、自動車輸入が同7割増となったことなどが牽引した。
鉄鉱石や銅などの輸入も6月から増加した。
人民元安の影響分析はないが、輸出を押し上げ、元先安を見越した輸入増となった可能性はある(日々の関心は人民元相場になる)。


対米黒字は280.9億ドル(6月289.7億ドル)、全体の貿易黒字が280.5億ドルなので、米国以外は小幅赤字に転じた。
1-7月対米黒字は1616.3億ドル、前年同期の1427.5億ドルから増加している。
米国は明確な黒字削減目標を示していないので、月次統計で緊張が走ることはないと見られるが、中国は欧州やアジアなどに対し「輸入大国」として振る舞う可能性は考えられる。


23日から双方が追加関税第2弾の実施を発表しているので、貿易戦争の影響は広がるが、実際の貿易統計に異変が出て来ない限り、株式市場への影響は限定的と考えられる。
不安心理を手掛かりに売り込んだ向きの買戻し基調は当面、続くと思われる(人民日報が米アップルを批判しており、国内情勢を乗り切った習政権がその勢いで高飛車に出てくることはリスクになる。

反面、サムスンの3年18兆円投資計画は不安軽減要因)。


代わって目先の焦点は、本日開催される日米新通商協議(FFR)。

米国でもハード・ネゴシエイターとして知られる茂木経済再生相がワシントンに乗り込んでいる。
米側は対中貿易政策を仕切っているとされるライトハイザー通商代表部代表。
今までの発言では「不公平な貿易障壁がある。
その一つは牛肉だ」と言った程度(TPPなどでライバルの豪牛肉に比べ不利になる)。
日本側は追加関税措置で自動車などに懸念視する論調が多いが、今更、米自動車が売れるとも思えず、既定路線のLNG、防衛装備品などの輸入増で凌ぐことになりそうだ。
日本は既に貿易依存ではなく、昨日発表された経常収支で示された第一次所得収支黒字国(上半期で10兆5324億円、海外子会社の配当金増など)。


米中間選挙の試金石とされたオハイオ州下院補選での接戦(共和党地盤)を見ると、新たな火種・対立を呼ぶより、好調経済の「現状維持」を訴える方が得策と思われ、日米は通商摩擦より、海外インフラや対中・対北朝鮮政策などでの協調路線を謳うことが基本路線と考えられる。
通商交渉は「時間が掛かる」(甘利元再生相:したがって相場への影響は限定的)と見て置きたい。



以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/9号)

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