[シドニー 18日 ロイター] - トムソン・ロイターがINSEADと共同で実施したアジア企業景況調査によると、第4・四半期のアジア主要企業の景況感指数は71と、1年半ぶりの高水準だった。
企業の販売が回復した。ただ貿易戦争を巡る不透明感を背景に人員の拡大を見送る企業が目立った。
第3・四半期の同指数は58と、約10年ぶりの低水準付近だった。上昇幅は、ユーロ圏債務危機が最終局面に入り、中国が景気対策を打ち出していた2011年以降で最大だった。
指数は調査対象企業の向こう6カ月の見通しを反映したもので、50が景況の改善と悪化の分岐点。
第4・四半期は「中立的」から「楽観的」にシフトする動きが目立った。販売の伸びは過去1年で最高だった。ただ過半数の企業は人員を増やす計画はないと回答した。
INSEADのアントニオ・ファタス教授(経済学)は「過去1四半期で情勢と見通しが改善し、一部の不透明感が払拭された」と分析。米中の緊張が緩和したことを指摘した。
ただ「この不透明感が消滅するわけではなく、今後数年から数十年にわたって一定の緊張関係は残るだろう」と述べた。
回答企業は、米中貿易戦争を最大のリスクに挙げた。米中貿易戦争は過去2年間、多くの期間で最大のリスクに挙げられている。
調査にはアジア太平洋諸国11カ国の102社が回答。対象地域は世界の人口の45%、世界の域内総生産(GDP)の約3分の1を占める。
調査は自動車、観光、エネルギーなど様々な業種の企業を対象に11月29日─12月13日に実施した。
タイのホテル経営マイナー・インターナショナルの財務担当幹部は「対外環境は引き続き厳しいが、当社はそうした課題に対処できると確信している」と表明。事業の多角化を進めており、事業環境が改善すれば利益を得られるとの見方を示した。
景気回復の兆候はすでに出ている。11月の中国の鉱工業生産と小売売上高は、政府の景気対策を背景に、予想を上回った。
世界経済の先行指標とされるフィラデルフィア半導体指数 (SOX)も今週、最高値をつけた。半導体の需要は経済成長と消費の動向を示す信頼できる指標になるとの見方が多い。
ただ、中国の経済成長率が約30年ぶりの低水準となるなど、保護主義の影響で、主要経済指標は引き続き低迷している。
OCBC銀行(シンガポール)のエコノミストは「少なくとも来年までは用心したほうがよいだろう。我々はまだ難局を脱していない。貿易戦争の第一波が完全に収束したと仮定すれば、2020年代に入っていくにつれ、力学が少し変わるだろう」と述べた。