[ロンドン 21日 ロイター] - 新型コロナウイルスの流行を受けて、中央銀行、政府系ファンド、公的年金基金がESG(環境・社会・ガバナンス)投資を重視し、アクティビスト(物言う株主)としての戦略を強化していることが年次調査で明らかになった。
調査はシンクタンクの公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)が、総額7兆ドルを運用する102の機関を対象に今年実施。21日の公表前にロイターが入手した。
OMFIFのチーフエコノミスト、ダナエ・キリアコポウロウ氏は「新型コロナで流れが加速していることは間違いない」と指摘した。
政府系ファンドの資金は、将来世代のための蓄えとなるだけでなく、混乱期の救済手段として利用されることが少なくない。
今回の調査では、ESGに関する質問を開始して以降初めて、中央銀行、政府系ファンド、公的年金基金の3部門すべてで、過半数の機関が何らからの形でESG投資を行っていると回答した。
ただ、部門間の差は大きく、すべての年金基金がESGの基準を設けていると回答した一方、ESGの基準を設けている政府系ファンドは全体の約3分の2、中央銀行は半数強だった。
調査対象の約6割は中央銀行だったが、株式やインフラ事業に投資している中央銀行は少なく、グリーンボンドが引き続き最も人気の高いESG投資の手段となっている。
グリーンボンドを保有している中央銀行は全体の3分の1以上。ただ、一部の中央銀行は、流動性や、特にドル建てのグリーンボンドの供給不足が課題になり得るとの見解を示した。
<転換点>
今回の調査では、環境汚染につながる企業やプロジェクトへの投資を見送るだけでなく、環境に配慮する責任ある慣行に持続可能な形で移行している企業やプロジェクトに投資する政府系ファンドや公的年金基金が目立った。
ただ、中央銀行、政府系ファンド、公的年金基金の約60%は、保有できる資産と保有できない資産を定めたESGベンチマークを利用しておらず、独自に開発したベンチマークを利用している機関は全体の8%にとどまった。
キリアコポウロウ氏は、オランダの裁判所がシェルに温室効果ガスの削減ペース加速を求めるなど、石油会社に環境対策を求める声が強まっていることについて「急進的で、転換点を迎えたと言えるが、変化に弾みがついていることは明らかだ」と述べた。