[シンガポール 25日 ロイター] - 英金融大手HSBCホールディングスが25日発表した第3・四半期決算は、融資の焦げ付きなどが響き、税引き前利益は前年同期比42%減少した。またノエル・クイン最高経営責任者(CEO)の実質的な後継候補となる人事も発表した。
アジア地域が事業の柱であるHSBCは、最も頼みとする中国の見通し悪化に直面している。中国共産党の新指導部は3期目続投の習近平氏陣営で固められ、週明けの中国株は急落。経済や投資家マインドを長らく冷やしているゼロコロナ政策は転換の兆しがない。
クインCEOは、中国ロックダウンが成長とHSBCの事業に打撃を与えているかとの質問に「中国は、HSBCのみならず世界にとって重要な市場だ。中国が発展し続けることを切に望む」と述べた。
第3・四半期の税引き前利益は31億5000万ドル。同社がまとめたアナリスト予想平均の24億5000万ドルは上回ったが、貸し出し債権の不良化、フランス事業売却に関連した24億ドルの費用が圧迫し、前年同期(54億ドル)を42%下回った。
貸倒引当金は11億ドル。前年同期の6億5900万ドルから予想以上に膨らんだ。
一方、金利上昇の恩恵を受け、純金利収入(NII)は30%増加し86億ドルと8年ぶりの高水準。純利ざやは第2・四半期から22ベーシスポイント(bp)上昇し1.57%となった。
HSBCの筆頭株主、中国平安保険は株主還元向上に向け主力のアジア事業分離などの選択肢を模索するよう圧力を掛けている。HSBCは業績改善のための組織見直しでカナダ事業の売却を探っている。
HSBCは自社株買いや配当支払いについて、再開するには自己資本比率を現在の13.4%から14%以上に引き上げる必要があると指摘。来年上期までに増収とコスト削減を通じて実施する方針を示した。
クインCEOは「2022年と23年のコスト目標達成に向けて順調に進んでいる」と述べ「23年以降、12%以上としているリターン目標の達成と株主への分配増」を目指すとした。
<CFO交代、次期CEOへ布石人事>
HSBCは、来年退任するイーウェン・スティーブンソン最高財務責任者(CFO)の後任に、投資銀行部門のトップを務めたジョルジュ・エレデリー氏(48)が就くと発表した。エレデリー氏は次期CEOの最有力候補となる。
エレデリー氏は今年1月、家族との時間を持つなどの理由で6カ月の長期休暇を取得。9月以降はクイン氏のためにプロジェクトに従事していた。
クイン氏はスティーブンソン氏について、3年にわたり業務の再構築で功績を収めたと評価しつつ、エレデリー氏の起用は自身の後継を念頭としたものだとロイターに述べた。その上で「今回の人事で戦略に変更が生じることはない」と説明した。
グッドボディーのアナリスト、ジョン・クロニン氏は、スティーブンソン氏は投資家の間で評価が高かったため退任は驚きだと述べ、今回の人事はHSBCの今後の方向性に多くの疑問を提起すると指摘した。