[北京 11日 ロイター] - 中国の航空会社は観光業の回復に伴い、新型コロナウイルスのパンデミック期に減少した客室乗務員を補充しようと採用を拡大している。就職難の中、給与が比較的高い乗務員職の人気は高く、多くの航空会社で大卒者の応募が殺到している。
客室乗務員職は、西側諸国では比較的給与水準が低く、大卒の資格が必要ない場合が多いが、中国では通常、大卒資格が求められ、政府が行う難しい英語の試験に合格していることが望ましいとされる。
中国民用航空局(CACC)のデータによると、中国はパンデミック期に客室乗務員の総数が流行前の2019年の水準から約1万1000人、11%減った。これは西側諸国で広く見られたレイオフが原因ではなく自然減によるものだ。
厦門航空、中国南方航空、春秋航空などの航空会社は、国内観光業の回復を受けて採用拡大を進めており、人気の高い海外都市と結ぶ便の運航再開を計画している。
中国は新規大卒者が過去最高の1158万人に上り、過去数十年で最悪の就職難を迎えつつあり、航空会社の乗務員募集には大卒者の応募が押し寄せている。背景には世界的に景気の見通しが悪化して輸出需要が鈍り、ハイテクや教育、不動産などの業界が人員を削減しているという労働市場の状況がある。
海南航空は年内に客室乗務員を1000人採用する計画だが、既に応募が2万人を超えた。山東省済南で2月に開いた採用フェアには900人が参加したが、採用は60人にとどまった。
年内に3000人を採用予定の中国南方航空には、昨年12月末時点でその7倍以上の応募があった。
専門家によると、パンデミック前は募集の10%程度の応募があれば御の字だった。
航空業界の専門家、リ・ハンミン氏は「月収が通常1万元(1454ドル)ないし2万元と悪くないし、世界中を飛び回れる楽しい仕事だから、以前から就職希望者の多い職種だ」と話す。
環球時報が2月に報じたところによると、2021年の大学新卒者のうち月収が1万元を超えたのはわずか6.1%だった。
<運賃は高止まり>
求職者が急増しているにもかかわらず、航空会社がすぐに新入社員を現場に配置するのは難しいかもしれない。客室乗務員は1年間の地上訓練を受けるためだ。これにより輸送能力を即座に向上させる航空会社の取り組みは進展が遅くなり、運賃は高止まりしそうだとリ氏は指摘。「航空会社は2024年についてかなり明るい見通しを立てており、今すぐに乗務員を採用する必要がある。そうしないと来年には人手が不足する」と言う。
国内線の輸送能力は3月半ば以降、2019年の水準を超えているが、国際線についてはパンデミック前の水準の30%にとどまっていることが、航空機の運航を追跡するフライトマスターのデータから分かる。
夏の繁忙期が近づき、航空会社は国際線の輸送能力増強に取り組んでおり、中華航空(チャイナエアライン)は北京─ローマ、北京─ホーチミン、成都市─ロンドンなどの路線の運航を再開すると発表した。しかし今のところ輸送能力が限られ、運賃は高止まりしている。
ビジネスマンのジン・フオさんは「フランクフルトから北京までのエコノミークラスの片道航空券が1万8000元だった。以前は往復がその3分の1だったのに」と話した。