[シンガポール 3日 ロイター] - 環境保護団体グリーンピースが3日発表した調査によると、中国は2023年前半に50ギガワット(GW)を超える規模の石炭火力発電所の新設を承認した。中国が化石燃料消費の削減よりもエネルギー安全保障を重視していることを示唆する。
異常気象も影響している。干ばつの影響で水力発電能力が低下。停電を回避するため、石炭火力発電所の建設を急がざるを得ない事情もある。
中国は温暖化ガスの排出量を30年までにピークアウトさせることを目指しており、習近平国家主席は26年から30年の間に石炭の使用を減らし始める方針を示している。
ただ調査責任者のGao Yuhe氏は「当局は石炭火力発電が30年にかけて『合理的なペース』で伸びると明言している」と述べ、習主席の約束がほごになる可能性が出てきたとみる。
中国の石炭生産量は昨年9%増加し45億トンと、世界全体の半分以上を占めた。今年も増加傾向にある。
石炭火力発電所の新設計画の多くは、天候に左右される再生可能電源を補うことが目的と説明されている。しかしGao氏は、「石炭偏重」が、再生可能エネルギーの信頼性を高めるエネルギー貯蔵インフラへの投資を妨げていると指摘する。
オーストラリア国立大学の気候研究者ジョリット・ゴセンズ氏は、発電所新設計画の規模から当局の主な動機は経済成長と考えられ、自然エネルギー支持という主張は説得力を失いつつあると述べた。
ただ中国国国家能源局のデータによると、石炭火力発電所とともに再生可能発電施設も増え続けており、上半期の発電能力は109GW増加した。
ゴセンズ氏は「再生可能エネルギーが競争力を増し続け、記録的なペースで建設されていることは朗報だ。その結果、石炭市場のシェアはすぐに縮小に転じるだろう」と述べた。