Takahiko Wada
[東京 20日 ロイター] - 総務省が20日に発表した9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は105.7と、前年同月比2.8%上昇した。燃料価格の下落が時間差を伴って波及し電気やガス料金の下落率が拡大、昨年8月以来の2%台に鈍化した。専門家からは、今後のCPIの伸びの縮小は緩やかなものになるとの見方が出ている。
エネルギー価格は11.7%下落し、前月の9.8%下落から拡大し2016年6月以来の下落率。電気代は24.6%下落、都市ガス代は17.5%下落で、ともに比較可能な1971年1月以降で最大の下落率となった。電気・ガス価格の激変緩和対策の影響で、総合指数は0.98%ポイント押し下げられた。
一方、ガソリンは8.7%上昇で前月より上昇率が拡大した。9月から元売り各社への補助金が増額されたが、調査対象日の9月13—15日時点では8月より価格が高かったという。
生鮮食品を除く食料は8.8%上昇で前月より伸びが鈍化した。鶏卵、冷凍調理コロッケなど前年同月に上昇率が高かった品目で一服感が出た。
宿泊料は17.9%上昇。前月を下回ったが、引き続き観光需要が旺盛で高い伸びが継続している。
コア対象品目522のうち、上昇は450、下落は35、変わらずは37。
コアCPIの伸び率は1年1カ月ぶりに2%台に縮小したが、ここからの縮小ペースは緩やかになりそうだ。UBS証券の栗原剛・次席エコノミストは「今年2月から始まった電気・ガス価格激変緩和対策による押し下げが24年の同時期に一転してベース効果として押し上げるため、2%を上回って推移する可能性が高い」と指摘。コアCPIの伸びのボトムは25年第1・四半期で1.5%付近になると予想している。
生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は4.2%上昇と、前月の4.3%上昇を下回った。総合指数は3.0%上昇でこちらも前月の3.2%上昇を下回った。
<賃金のサービス価格への転嫁、広がりは見られず>
9月の全国CPIでは、財が4.0%上昇で前月を下回る一方、サービスは2.0%上昇で前月と伸び率は変わらなかった。
UBS証券の栗原氏は「賃金上昇のサービス価格への価格転嫁は一部では見られるものの、まだ幅広いものにはなっていない」と指摘する。栗原氏によると、ウエートにして18%の一部のサービス品目 (外食、宿泊費、通信費、火災地震保険料)が現在のサービス価格の上昇率2.0%のうち1.3%ポイント分を占めるのに対し、残り82%の品目のインフレ率は0.8%にすぎない。
総務省の担当者は「一部外食事業者の価格改定のプレスリリースを見ると、原材料費の上昇のみならず人件費について言及するケースも見受けられるようになってきている」と指摘。賃金動向を踏まえつつ、サービス価格の動きを注視する必要があるとした。
栗原氏は、来年の春闘や賃金上昇が強い結果となっていけば「企業は持続的な賃上げが起きてきていると認識し、さらに幅広くサービス価格が上昇していく可能性が十分にある」とみている。
日銀の植田和男総裁は9月の講演で、昨年来の物価上昇を輸入コスト由来の「第一の力」と賃金上昇による「第二の力」に分け、物価目標に近づいたか判断するためには「景気が改善するもとで賃金が上昇し、それが物価の緩やかな上昇につながるというメカニズムが強まっていくか、それに伴って将来の価格上昇を見越したフォワードルッキングな賃金・価格設定が広がっていくか」がポイントになると述べた。
(和田崇彦 編集:田中志保、橋本浩)