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アングル:コスト上昇でも中国依存、西側玩具メーカーの事情

発行済 2024-01-19 10:40
更新済 2024-01-19 10:46
© Reuters.  1月15日、西側の多くの玩具メーカーは、中国でのコスト増に苦しみつつも、より安価な生産拠点がなかなか見つからない。写真はインド・ベラガビにあるイクスの玩具工場。提供写真
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Richa Naidu

[ロンドン 15日 ロイター] - 西側の多くの玩具メーカーは、中国でのコスト増に苦しみつつも、より安価な生産拠点がなかなか見つからない。

米ハズブロは6年前、インドで耐久財や航空機部品を手がけるイクスに下請けを打診。イクスの消費者事業系列責任者、ロヒト・ヘグデ氏は「ハズブロ側から『あなた方が玩具製造に参入するなら、われわれは数百万ドル相当の製品を中国からインドに移転します』と言われ、こちらは『少なくとも向こう数年で1億ドルの事業になるなら、間違いなく投資する』と答えた」と当時を振り返る。

そして現在、イクスは南部カルナタカ州ベラガビにある2カ所の工場で、ハズブロやスピン・マスターなどのために数十種類の玩具を製造するようになった。

しかし、ヘグデ氏など複数の玩具メーカー関係者らは、インドや他の国は効率性の点で中国にまだ対抗できないと認める。この点が、各企業によるコストの低い地域への生産拠点移行に向けた取り組みの足かせとなっているばかりか、中国で大半の生産が続いた場合に今後、玩具の販売価格が上振れるリスクを増大させている。

ヘグデ氏は「(インドには)中国のような港湾設備も、整備された道路もない。過去30年間にわたって努力してきた中国の方が、効率性のレベルはずっと上だ」と指摘した。

一方で、ハズブロや「バービー」人形のマテルなどの玩具メーカーにとって、生産の大部分を中国に依存するリスクが、新型コロナウイルスのパンデミックで浮き彫りになった。当時、中国各地の港湾からの製品輸出は難航し、断続的に閉鎖されて出荷が滞ったからだ。

中国では人件費高騰により、既に製造業全体で見ると生産拠点を世界的に分散化する動きが進展している。

ロジウム・グループが昨年9月に公表したリポートでは、インドで欧米企業が新たに法人を設立して行う直接投資(グリーンフィールド投資)は2021年から22年にかけて650億ドル(400%)も増加した。

その一方、22年の中国向けは200億ドル弱と、ピークだった18年の1200億ドルを大きく下回った。メキシコ、ベトナム、マレーシアなどにも投資資金がシフトした。

ただ、玩具メーカーは、ほかのセクターほど生産拠点の円滑な移転が進んでいない。

昨年1―7月の段階でも、欧米で販売される玩具の79%が中国で生産され、その比率は19年の82%からあまり低下していないことが、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス傘下のパンジバからロイターに提供されたデータで分かる。

対照的に欧米に輸入される衣料品のうち、中国本土製の比率は19年時点で既に35%だったが、昨年1―7月は30%まで下がり、インドとメキシコが最大の恩恵を受けた。

S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのクリス・ロジャース氏は「中国本土からの生産拠点移転は簡単かと言えばそうではない。玩具の場合(難度は)2倍に切り上がる。玩具は極めて季節性があり、パートナーに1年のほとんどの期間、在庫を抱えてもらうようお願いする形になるので、より厄介だ」と語り、製品の安全性や原材料調達の面でより厳格な姿勢なども求められると説明した。

また、ロジャース氏によると、玩具メーカーが下請けから製品を調達するとしても、調達先の国を切り替えて態勢を整えるには1年半、別の国で新工場建設から始めれば最長3年はかかるという。

<ネックはインフラ>

ハズブロは18年の年次報告で、事業リスクとしての中国への際立った依存を挙げて対応を開始。マテルは、鉛を含む塗料を巡って製品リコール問題が起きた07年以降、中国からの生産拠点移行に動いていると伝えられる。

玩具の販売価格は、中国での賃金高騰で押し上げられている。例えば、英国では22年1-6月に価格が約8%も上昇。メーカー各社が生産拠点を移してコスト圧縮ができないと、急激な値上がりが続きかねない。

米国の中国製玩具に対する関税は今のところ無視できるほど少ない。だが、野党共和党の一部議員から中国の最恵国待遇廃止を求める声が出ている点を踏まえると、状況が変わっておかしくない。全米小売連盟(NRF)の試算では、実際に最恵国待遇が廃止されれば、米国の玩具価格は2割以上も跳ね上がる見通しだ。

「たまごっち」シリーズを展開するバンダイ傘下のバンダイUKのマネジングディレクター、ニック・アルドリッジ氏は「われわれは中国のデリスキング(リスク低減)を全面的に検討している。中国では原材料コストが大幅に上昇し、もっと妥当なコストを得られる場所に目を向けつつある」と述べた。

バンダイの大半の製造活動は引き続き中国本土で行われているとはいえ、一部製品は台湾、日本、ベトナムで生産されている。アルドリッジ氏は、さらにインドとタイも視野に入れていると明かした。

それでも「ブラッツ」人形などを手がけるMGAエンターテインメントは、インドやベトナムなどに生産拠点を分散する際にネックとなるのはやはりインフラ問題だと痛感している。

© Reuters.  1月15日、西側の多くの玩具メーカーは、中国でのコスト増に苦しみつつも、より安価な生産拠点がなかなか見つからない。写真はインド・ベラガビにあるイクスの玩具工場。提供写真(2024年 ロイター)

パンジバのデータに基づくと、過去5年間に欧米へ輸入された玩具のうち、インド製の比率はわずか1%に過ぎない。

MGAのアイザック・ラリアン最高経営責任者(CEO)は、ロイターに「インドにおけるこの問題は、ある州から別の州に(拠点を)移す場合でさえ本当に手詰まりになってしまう。規制の多さは常軌を逸している」と嘆く。

ただ、ラリアン氏はインドなども中国からビジネスを奪う機会で投資が必要なのだと認識しているので、インフラは改善の一途をたどっているとも評価した。

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