Allison Lampert
[ラスベガス 11日 ロイター] - ビジネス用のプライベートジェットといえば、かつては、それにふさわしい財力のある人間にとっては、空港での順番待ちから逃れる避難場所だった。だが、パンデミックの勢いが衰えつつある現在、需要の急拡大により、富裕層もフライトのキャンセルや遅延といった事態に直面している。
世界を飛び回る「ジェット族」にとっては頭の痛い状況である一方、定員19人以下という贅沢な法人向けジェット機を製造するメーカーにとっては、この需給逼迫は福音だ。12─14日に開催された世界最大規模のビジネスジェット見本市では、各社が多くの新規受注を受けたとみられる。
フラクショナル・オーナーシップ(共同所有権)の販売やチャーター機の運航を行っている事業者の中には申し込みを断るところも出てきており、ホリデーシーズンを控えたいっそうの需給逼迫に直面し、機体の追加購入に走っている。
米国では、プライベートジェットの交通量は2019年の水準を超えている。人員不足も重なり、プライベートジェット業界では燃料補給からケータリングサービスまで、業務の負担が増している。しかも、業界幹部によれば、故障機と交換するための代替機も減少しているという。
サービスの質を維持するため、ネットジェッツは最近、顧客がフライトを前払いの時間制で購入できる「ジェットカード」の販売を停止した。
プライベートジェット事業では世界最大である同社は、約25億ドルを投じて100機を新規購入するが、納入は現在から2022年末までの間になるという。
オハイオ州を本拠とするネットジェッツは、「フライト数は膨大で、旅客航空インフラには、私たちでさえ長いこと経験しなかったほどの負荷がかかっている」と語る。
2021年6月に航空管制に起因して遅延したフライトの件数は、パンデミック渦中で運航が急減した前年同月と比べ約10倍にも達したと同社はみている。
ネットジェッツによれば、フライト需要は「現在、(過去57年に同社が経験した)あらゆるピークを更新中」であり、1日あたりのフライト件数は2019年が400便以下だったのに対して、平均500便前後に達しているという。
「ほとんどのオーナーは、最近の搭乗でもこれまで同様に利用できているが、業界全体での需要の高まりと重なって不便を感じた方もいるようだ」と同社は語る。
一種の卸売ビジネスとしてチャーター便運航事業者にジェット機を提供するフライ・エクスクルーシブでは、クライアント側での機体不足が顕著になって以来、提供の要請が著しく増大している。
投資家たちはプライベートジェット市場の動向を注視している。運航事業者はビジネスジェット機メーカーにとって重要な顧客だからだ。
運航の遅延はプライベートジェットを利用する富裕層の間に不満を生んでおり、すでに別の選択肢を探す動きもみられる。
航空分野を専門とする法律事務所エアレックス・ロー・グループのパートナーであるアマンダ・アップルゲート氏は、サービスに不満を持った顧客からの電話を、9月だけでも10本受けたという。
「順調な時期にはそうした電話などかかってこないか、せいぜい半年に1-2回といったところだ」とアップルゲート氏。同氏は航空機所有権の売買案件を扱っており、顧客に対する情報発信の拠点となっている。
アップルゲート氏は、最良のサービスを求めるプライベートジェットの顧客にどう答えていいか見当がつかないと語る。「とにかく、十分なキャパシティーがないとしか言いようがない」
プライベートジェット会社ビスタジェットの最高商務責任者(CCO)であるイアン・ムーア氏は、プライベートジェット業界でも、会議が長引いたからといってギリギリになってフライト予約をキャンセル・延期するような顧客を、ペナルティー無しで大目に見るような余裕は乏しくなっていると語る。
最近では、飛行機がそういう顧客を待つことはない。「わがままを認めるための十分な供給能力などない」とムーア氏は語る。
(翻訳:エァクレーレン)