[3日 ロイター] - <為替> 安全資産への買いが強まった。米国がイラクへの空爆により、イラン革命防衛隊の司令官を殺害したこと受け、中東情勢が緊迫化し、円が3カ月ぶりの高値に上昇。一方、低調な米製造業指数を背景にドル指数は伸び悩んだ。
米国防総省は、イラクの首都バグダッドの空港で現地時間3日未明、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官(62)らを乗せた車列を空爆し、同司令官を殺害したと発表。これを受け、円のほか、米国債や独国債、金などが上昇した。
ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「全体的に地政学的なリスクプレミアムが一晩で大幅に上昇した」とし、投資資金が安全資産に向かっているとの見方を示した。
円
ドル指数 (DXY)は序盤の取引で安全資産買いを背景に上昇していたが、米供給管理協会(ISM)が3日公表した2019年12月の製造業景気指数が09年6月以来10年半ぶりの低水準だったことで上げ幅を縮小。終盤は0.03%高の96.873となった。
シャモッタ氏はISM製造業景気指数について「失望的な内容だった」と指摘。「貿易摩擦を巡る不確実性が実際に製造業セクターに持続的な損害を与えていることを示しており、国内総生産(GDP)の低迷につながる」と述べた。
<債券> 国債利回りが急低下。米国がイラン革命防衛隊の司令官を殺害し、両国間の緊張が高まったことで安全資産が買われた。
米国防総省は、イラクの首都バグダッドの空港で現地時間3日未明、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官(62)らを乗せた車列を空爆し、同司令官を殺害したと発表した。
BMOキャピタル・マーケッツの金利ストラテジスト、ジョン・ヒル氏は、市場が「地政学的な緊張の高まりに反応した」と述べた。
米供給管理協会(ISM)が3日公表した2019年12月の製造業景気指数が09年6月以来10年半ぶりの低水準になったことも債券買いにつながった。
この日の午後にはイラクの米軍基地がミサイル攻撃を受けたとの観測報道を受け債券買いが強まる場面があった。その後、当局者が観測報道を否定した。
終盤の10年債利回り (US10YT=RR)は1.799%で推移。一時昨年12月12日以来の低水準である1.788%まで低下する場面があった。前日終盤は1.882%だった。
この日発表された12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策枠組みの明確化に焦点を合わせるとともに、FRBメンバーは「当面」、政策金利の据え置きに合意していることが示された。
<株式> 下落して取引を終えた。米国のイラク空爆により中東での緊張が高まったほか、低調だった米製造業指標を受け、経済成長鈍化への懸念が広がった。
この日の下げにより、S&P500は週間でマイナスに転じ、6週ぶりの下落となった。
米国防総省は、イラクの首都バグダッドの空港で現地時間3日未明、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官(62)らを乗せた車列を空爆し、同司令官を殺害したと発表。一方、イラン側は報復を予告するなど反発を強めており、米イランの対立激化懸念から安全資産への買いが強まった。
また米供給管理協会(ISM)がこの日公表した2019年12月の製造業景気指数が09年6月以来10年半ぶりの低水準をつけたことも投資感心理に影を落とした。
ロバート・W・ベアードの市場ストラテジスト、マイケル・アントネッリ氏は、米国株が買われすぎているという見方に製造業指数の落ち込みと地政学的なリスクが加わったと述べた。
セクター別では銀行株<.SPXBK>が1.6%安。指標米10年債利回り (US10YT=RR)が12月12日以来の低水準を付けたことを受けた。
原油価格が約3%上昇したことを受け、航空株も下落。米アメリカン航空グループ (O:AAL)が5%安、ユナイテッド航空 (O:UAL)が2.1%安となった。
S&P11業種中で上昇したのはディフェンシブ性の強い不動産株<.SPLRCR>と公益株 (SPLRCU)のみだった。
また米空爆を受け防衛関連株も上昇。ノースロップ・グラマン (N:NOC)が5.4%高、ロッキード・マーチン (N:LMT)が3.6%高となり、S&P500構成銘柄で値上がり上位だった。
一方、バンテージポイント・インベストメント・アドバイザーズの最高投資責任者(CIO)、ウェイン・ウィッカー氏は、空爆による市場の混乱は短期的なものにとどまるとの見方を示した。
週間ではダウが0.04%安、S&P500が0.17%安となる一方、ナスダックは0.16%上昇した。
個別銘柄では、テスラ (O:TSLA)が3%上昇し最高値を更新。第4・四半期の引き渡し台数が予想を上回った。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を1.14対1の比率で上回った。ナスダックでも1.71対1で値下がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は74億7000万株。直近20営業日の平均68億7000万株を上回った。
<金先物> 中東情勢の緊迫化を背景とした買いが膨らみ、8営業日続伸した。2月物の清算値は前日比24.30ドル(1.6%)高の1オンス=1552.40ドルと、中心限月としては2019年9月4日(1560.40ドル)以来約4カ月ぶりの高値となった。
米国防総省は2日夜、トランプ大統領の指示により、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は3日、「厳しい報復」を宣言。米イラン間の対立が一層激化するとの懸念が台頭する中、この日は世界的にリスク回避の流れが強まり、金塊は円やスイス・フラン、米国債などの安全資産とともに選好された。
また、米サプライ管理協会(ISM)が3日午前に発表した12月の米製造業景況指数が47.2と10年半ぶりの低水準に沈み、景気拡大・縮小の節目とされる50を5カ月連続で割り込んだことも投資家心理を圧迫。金相場は午前から午後にかけ、1550ドル台の高値圏を堅調に推移した。
<米原油先物> 中東情勢の緊迫化や米原油在庫の減少を背景に買い進まれ、大幅続伸した。米国産標準油種WTI2月物の清算値は前日比1.87ドル(3.1%)高の1バレル=63.05ドルと、中心限月ベースでは2019年5月下旬以来約7カ月半ぶりの高値となった。3月物は1.87ドル高の62.82ドルとなった。
米国防総省は2日夜、トランプ大統領による指示で、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。これを受けて、中東産油地域での供給懸念が強まり、原油が買い進まれた。
さらに、米エネルギー情報局(EIA)が発表した19年12月27日までの米石油在庫統計で、原油在庫が前週比1150万バレル減と、市場予想(ロイター通信拡大版調査)の330万バレル減を大幅に上回る取り崩しとなったことも、相場を支えた。
ドル/円 NY終値 108.08/108.11
始値 108.01
高値 108.26
安値 107.84
ユーロ/ドル NY終値 1.1158/1.1162
始値 1.1128 (EUR=)
高値 1.118
安値 1.1129
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 102*23.00 2.2494% (US30YT=RR)
前営業日終値 100*24.00 2.3400%
10年債(指標銘柄) 17時05分 99*19.50 1.7933% (US10YT=RR)
前営業日終値 98*26.00 1.8820%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*23.75 1.5945% (US5YT=RR)
前営業日終値 100*12.25 1.6700%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*05.75 1.5326% (US2YT=RR)
前営業日終値 100*03.13 1.5750%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 28634.88 -233.92 -0.81 (DJI)
前営業日終値 28868.80
ナスダック総合 9020.77 -71.42 -0.79 (IXIC)
前営業日終値 9092.19
S&P総合500種 3234.85 -23.00 -0.71 (SPX)
前営業日終値 3257.85
COMEX金 2月限 1552.4 +24.3
前営業日終値 1528.1
COMEX銀 3月限 1815.1 +10.5
前営業日終値 1804.6
北海ブレント 3月限 68.60 +2.35 (LCOc1)<0#LCO:>
前営業日終値 66.25
米WTI先物 2月限 63.05 +1.87 (CLc1)<0#CL:>
前営業日終値 61.18
CRB商品指数 186.8967 +186.8967 (TRCCRB)
前営業日終値 0.0000 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200103T225709+0000