[フランクフルト 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、主要政策金利を0.25%ポイント引き上げる一方で、利上げ打ち止めの可能性を示唆した。
利上げは10会合連続。ECBは声明で「現在の評価を踏まえ、主要政策金利はインフレ率の適時目標回帰に多大な寄与をするとみられる水準に到達し、十分長い期間維持されたと理事会は考える」と述べた。
理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。
<金利>
(今日の声明において)「十分に制約的な」水準と期間の両方の要素が重要だ。焦点がおそらく期間にややシフトすることは明らかだが、今がピークに達していると言うことはできない。
「必要な限り」というのは実際には特定できず、多大な寄与も特定することはできない。なぜなら、データに対して毎回評価を行わなければならないからだ。
<回復は2024年まで後ずれ>
われわれは明らかに緩やかな低成長の時期にいる。
現在は困難な時期にあり、われわれが予想していた回復は24年に後ずれする。
<賃金上昇について>
(賃金上昇は)インフレ、特に一般的に労働集約性が高いサービス部門の賃金インフレに深刻な影響を与えているため、われわれはこれを非常に慎重に見ている。
<政策の伝達>
現行の利上げサイクルが以前よりも迅速に資金調達状況に波及しているという証拠がある。
<金利上昇が不動産セクターに与える影響>
金利水準とインフレを抑えるためにわれわれが行っている金融引き締めは現時点で不動産セクター全体を困難な状況に陥らせている要因の一つとなっている。
われわれはそれに気付いていないわけではなく、承知している。われわれは特定のセクターを維持し支援することに動かされているのではなく、物価の安定という責務を果たさなければならないという使命に動かされている。
<信頼性の目標>
私が知っているのは、ECBが方向的には前向きであるということだ。
私の信頼性の定義はわれわれが責務を果たすことだ。われわれの信頼性は中期的な2%(のインフレ目標)を適時に達成できるかどうかにかかっている。
<ピークとは言っていない>
われわれは今がピークだと言っているわけではない。
今日の決定により、われわれは現在の評価の下でインフレ率を適時に目標に戻すのに十分な寄与を果たした。
<「十分に長い期間」とは>
理事会は「十分に長い」ことについて議論したか。答えはノーだ。それは、われわれはデータに依存するとも同時に表明しているからだ。
<PEPP、APPに関する討議なし>
パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)のほか、(満期償還資金の)再投資、フォワードガイダンスに関する討議はなかった。PEPPはECBの柔軟的な手段で、金融政策の適切な伝達を保全する際の第一線の防衛手段となる。
通常の資産買い入れプログラム(APP)についても、いかなる売却も討議されなかった。
<低成長>
われわれは5四半期ほど、成長が極めて低調になる期間に入っている。
<成長リスク>
経済成長に対するリスクは下向きに傾いている。金融政策の影響が予想以上に強まったり、中国経済の一段の減速などで世界経済が弱体化したりすれば、成長は鈍化する可能性がある。
逆に、好調な労働市場、実質所得の増加、不確実性の後退により、人々や企業の信頼感が高まり、消費が拡大すれば、成長は予想を上回る可能性がある。
<一部の理事は(利上げの)一時停止を希望>
一部の理事は、より確かな多くの知見が得られるまで(利上げを)一時停止し、将来の決断を保留することを望んだ。
ただ、今回の決定に賛成する理事が過半数を占めた。あと1回(の利上げ)を望んだ理事も何人かいたが、確固たる多数派に頼り決定を行った。
<インフレリスク>
インフレの上振れリスクにはエネルギーと食料品のコストに対する新たな上昇圧力の可能性や悪天候が含まれる。広範な気候危機の進行により食料品価格が予想以上に上昇する可能性がある。
<底堅い労働市場>
景気減速にもかかわらず、労働市場はこれまでのところ底堅さを維持している。
<インフレ>
インフレ率は低下し続けているが、依然として高過ぎる状態が長期間続くと予想される。
<サービス部門の弱体化>
これまで底堅さがあったサービス部門も現在は軟化しつつある。
<時間の経過とともに上向く>
インフレ率の低下、賃金の上昇、堅調な労働市場に支えられ、実質所得が増加すると予想されるため、時間の経過とともに経済の勢いは上向くはずだ。そしてこれが個人消費を下支えすることになるだろう。
<経済の低迷>
経済は今後数カ月間、引き続き低迷する可能性が高い。今年上半期は全般的に停滞した。