Yoruk Bahceli Naomi Rovnick
[14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で政策金利の25ベーシスポイント(bp)引き上げを決めるとともに、物価上昇率見通しを上方修正した。ただユーロ圏経済の低調さを踏まえ、今回が利上げ打ち止めとなる可能性も示唆した。
一方、ECBが発信したメッセージの主旨は「より高い金利がより長く」維持されるという内容だったが、市場はECBが来年利下げに動くとの予想を変えておらず、ECBのそうした声に耳を貸そうとしていないようだ。
市場では、過去1年余り続いた利上げ局面が終わりそうなことが好感され、ユーロ圏国債利回りが低下(価格は上昇)し、株価も上がった。
ユーロ圏のリスク指標となっているイタリア国債が買いを主導。10年物利回りは最大で15bp低下した。メディオラナム・アセット・マネジメントの債券戦略責任者チャールズ・ディーベル氏は「今回の動きはハト派的利上げでこれが最後、というのがコンセンサスであり、視界不良は一掃された」と話す。
ECBが利上げに踏み切るか、政策金利を据え置くかは、ぎりぎりまで予想が難しかった。物価は高止まりが続く半面、ユーロ圏の経済活動が悪化しつつあるからだ。
そうした中でECBにとって結局はインフレへの懸念が上回ったことになる。しかし市場は先行きの経済成長に対する不安をより重視し、来年6月までに25bpの利下げが始まると想定している。
ECBは最新見通しで今年のユーロ圏成長率を0.7%に引き下げたものの、ロイターがまとめたエコノミスト予想はそれより低い0.6%。リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、サイモン・ベル氏は「市場の価格形成とECBが見込む経済成長レベルにはかい離がある。市場がECBの成長見通しを信じているなら、緩やかな景気後退を織り込みはしないはずだ」と述べた。
国債が買われた理由としては、ECBがパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)からの満期償還金再投資を来年末まで続けると約束したことも挙げられる。ECBには再投資先について裁量権が拡大しているので、特にイタリア国債などにとってこの措置は大事な意味を持つ。
メディオラナムのディーベル氏は「利上げの脅威が取り除かれたことは、ドイツよりイタリアにとって大きなプラスになるのは間違いない。そして資産買い入れを巡る混乱をもたらす発言がなかったのも、同じぐらい重要だ」と説明した。
とはいえ市場の楽観ムードは続かないかもしれない。ECB理事会のタカ派メンバーは既に、PEPP償還金再投資の打ち切り前倒しを主張し始めたし、利上げ打ち止めとともにECBはバランスシート圧縮に関する議論を開始する公算が大きい。一部のアナリストも、ECBがPEPP償還金再投資を予定より早く縮小するか、停止すると予想している。
LSEG傘下のIFRマーケッツのストラテジスト、ディブヤン・シャー氏は、市場が利下げ開始時期の予想を先送りしなかったことで、政策運営を巡る不透明感の大きさが浮き彫りになったとの見方を示した。
実際、ECBのラガルド総裁は会見で、政策金利がピークに達したとは言っていないし、高金利を「十分に長く」維持することの具体的な意味も議論しなかったと述べた。
それでもフィデリティ・インターナショナルのグローバル・マクロ・エコノミスト、アンナ・ステュプニツカ氏は「市場は今後数日から数週間で(より高い金利が長く続く展開を)織り込み始めると思う」と話した。