William Schomberg Andy Bruce
[ロンドン 20日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が20日発表した8月の消費者物価指数(CPI)は前年比上昇率が市場予想に反して鈍化した。イングランド銀行(中央銀行)の金融政策決定を翌日に控え、利上げ継続について不透明感が強まった。
CPI上昇率は6.7%と7月の6.8%から鈍化し、2022年2月以来の低水準を付けた。ロイターがまとめた市場予想は7.0%。予想外の減速を受けてポンドは対ドルで5月以来の安値を記録し、対ユーロでも下落した。
激しく変動することが多いホテル料金と航空運賃が下落したほか、食品価格の上昇率も前年同月を下回った。
中銀は先月、CPIのインフレ率について8月に7.1%に加速した後、10月に5%程度まで急低下するとの予測を示していた。
市場は中銀が21日に政策金利を5.25%から5.5%に引き上げると予想していたが、CPI統計を受けて不確実性が強まった。市場が織り込む中銀の利上げ停止確率は0800GMT(日本時間午後5時)現在で約45%と、前日の約20%から急上昇した。
変動の激しい食品・エネルギーを除くコアインフレ率は6.2%で、7月の6.9%から低下。ロイターがまとめた市場予想は6.8%だった。サービス価格の伸びは6.8%と、7月の7.4%から減速した。
CPIの伸び鈍化は中銀にとって安心材料になるだけでなく、政府からも歓迎する声が上がった。
ハント財務相は「インフレ対策が奏功していることを示した」と評価。ただ、依然として高すぎるためインフレ率を年内に半減させる方針を堅持し、家計や企業への圧力を和らげる必要があると強調した。
8月の生産者物価指数(PPI)は前年比0.4%下落しており、インフレ圧力は今後さらに弱まる可能性がある。製造業の投入価格は2.3%下落した。
ただ、一部のエコノミストは中銀が21日に利上げを継続する可能性があると予想。
KPMG・UKのチーフエコノミスト、ヤエル・セルフィン氏は「今回のインフレ統計でも明日の利上げは揺らがない可能性がある」と指摘。「6月以降25%以上値上がりしている原油価格に対する懸念が再燃しているほか、世界の食料価格に対する潜在的な圧力もある。こうした要因でディスインフレのプロセスが鈍化し、インフレ期待の低下が反転する可能性があり、これは中銀にとって追加の懸念要因だ」と述べた。
INGのエコノミスト、ジェームズ・スミス氏は非常に際どい判断になるだろうが、中銀は利上げに踏み切ると予想した。またこれで利上げが打ち止めとなる公算が大きいと述べた。