[東京 25日 ロイター] - 政府は25日、5月の月例経済報告で、景気判断を示す総括判断を「持ち直しの動きがみられる」のまま据え置いた。新型コロナウイルスとの共生を進める取り組みのもと、外食や旅行などサービス消費が持ち直していることを踏まえ、2020年3月から使用していた同感染症に関する記述を削除した。
先行きについては「景気が持ち直していくことが期待される」とする一方、中国での感染再拡大の影響やウクライナ情勢の長期化などを背景とした供給制約を下振れリスクの第一に挙げた。また、原材料価格の上昇や金融市場の変動なども十分注意する必要があるとした。
日本銀行には適切な金融政策運営を行い、経済や物価、金融情勢を踏まえ、2%の物価安定目標を「持続的・安定的」に実現することを期待するとした。先月から表現を修正した。4月は、「持続的・安定的」という表現は入っていなかった。
関連して、山際大志郎経済再生相は同日の会見で、「日銀に対しての態度を変えるつもりは全くない」と話した。消費者物価が2%を一時的に超える状況にあり、「明確に、安定して、持続的に続くような状況を作っていかなくてはいけない、ということを示した」と説明した。
経済の主な項目別では、物価に関しては、幅広い品目で値上がりしていることを背景に、変動の大きい生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価(コアコアCPI)も上がっており、「このところ上昇している」との表現に見直した。現行の消費者物価の判断を始めた2007年12月以降、「緩やかに」などの文言を用いずに「上昇している」という表現にするのは初めて。
雇用情勢の判断は「持ち直しの動きがみられる」とし、5カ月ぶりに上方修正した。就業者数が緩やかに増加し、失業率が2カ月連続で低下したことが背景にある。製造業や宿泊・飲食サービス業で特に求人が増加したことも理由に挙げた。
住宅建設は「おおむね横ばい」と8カ月ぶりに判断を引き上げた。コロナ禍で停滞していた大型物件用の土地取引が昨年から動き始め、時間差で分譲マンションの着工につながっている。
一方、輸入は6カ月ぶりに判断を引き下げ、「このところ弱含んでいる」とした。一部都市の封鎖を伴う中国の厳格なコロナ対策で、現地の経済・社会活動が制限されているため。
中国の感染再拡大の影響を踏まえ、世界景気への判断を2020年4月から25カ月ぶりに下方修正し、「一部の地域において足踏みがみられるものの、持ち直している」とした。
※〔表〕月例経済報告の景気判断の推移