*09:00JST インドネシアが通貨安是正に本腰【フィスコ・コラム】
インドネシア通貨ルピアの安値圏でのもみ合いが続いています。
中銀は介入や利上げで防戦一方。
5月に発足した新政権は経済協力開発機構(OECD)加盟により、通貨安是正の長期的課題に取り組む構えですが、外交の壁が立ちはだかっています。
アメリカのインフレ高止まりを受けたドル選好地合いは、アジア通貨安をもたらしています。
インドネシアルピアも年初から値を下げ続け、2020年のコロナ禍ピークに付けた過去最安値の1ドル=16400ルピアに接近中です。
インドネシア中銀は利上げや為替介入に踏み切らざるを得ない状況。
ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ時期は後退し、ルピア相場は不透明感を強めています。
インドネシアは1997年のアジア通貨危機に見舞われた際、透明性の欠如や政策の不確実性が投資家の不信を招き、通貨の急落を引き起こしました。
同国は当時の混乱を教訓に、経済の多角化と外貨準備の拡充に邁進。
ただ、投資家の信頼を回復するには安定した投資環境を提供する必要があります。
高支持率のまま任期切れを迎えたジョコ前大統領の路線を受け継ぐプラボウォ新大統領にとっても、通貨安是正が当面の重要課題になります。
OECDとインドネシアは今年2月、加盟に関する協議を開始。
審査結果の発表は4-5年後とみられ、正式加盟なら東南アジアからは初めて。
そのメリットとして、国際的な信頼性の向上で経済政策の透明性とガバナンスが強化されるほか、多くの国との自由貿易協定の恩恵が見込まれます。
構造改革により金融市場の安定化やインフラ投資が促進され、長期的な成長とともにルピアの価値が増すと期待されます。
一方で、ルピアへのリスクも伴います。
OECD加盟による相対的な期待が低下すれば、ルピアの急落を引き起こすかもしれません。
また、加盟プロセスを通じた改革は、短期的には国内的に負担になるケースも考えられます。
加速度的な経済成長も、構造改革や規制により一時的な鈍化が想定されるでしょう。
それがルピアの価値にネガティブな影響を与える可能性もあります。
注目されるのは、イスラエルとの関係です。
インドネシアはイスラエルを国家として公式に承認しておらず、イスラエルはインドネシアのOECD加盟に反対の立場。
宗教上の違いから交渉が難航し、遅延は避けられない見通しです。
インドネシアは他の加盟国に対する外交努力を強化し、多国間交渉を通じて支持を積み上げていくのが正攻法となるでしょう。
慢性的なルピア安からの脱却は容易ではなさそうです。
(吉池威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
中銀は介入や利上げで防戦一方。
5月に発足した新政権は経済協力開発機構(OECD)加盟により、通貨安是正の長期的課題に取り組む構えですが、外交の壁が立ちはだかっています。
アメリカのインフレ高止まりを受けたドル選好地合いは、アジア通貨安をもたらしています。
インドネシアルピアも年初から値を下げ続け、2020年のコロナ禍ピークに付けた過去最安値の1ドル=16400ルピアに接近中です。
インドネシア中銀は利上げや為替介入に踏み切らざるを得ない状況。
ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ時期は後退し、ルピア相場は不透明感を強めています。
インドネシアは1997年のアジア通貨危機に見舞われた際、透明性の欠如や政策の不確実性が投資家の不信を招き、通貨の急落を引き起こしました。
同国は当時の混乱を教訓に、経済の多角化と外貨準備の拡充に邁進。
ただ、投資家の信頼を回復するには安定した投資環境を提供する必要があります。
高支持率のまま任期切れを迎えたジョコ前大統領の路線を受け継ぐプラボウォ新大統領にとっても、通貨安是正が当面の重要課題になります。
OECDとインドネシアは今年2月、加盟に関する協議を開始。
審査結果の発表は4-5年後とみられ、正式加盟なら東南アジアからは初めて。
そのメリットとして、国際的な信頼性の向上で経済政策の透明性とガバナンスが強化されるほか、多くの国との自由貿易協定の恩恵が見込まれます。
構造改革により金融市場の安定化やインフラ投資が促進され、長期的な成長とともにルピアの価値が増すと期待されます。
一方で、ルピアへのリスクも伴います。
OECD加盟による相対的な期待が低下すれば、ルピアの急落を引き起こすかもしれません。
また、加盟プロセスを通じた改革は、短期的には国内的に負担になるケースも考えられます。
加速度的な経済成長も、構造改革や規制により一時的な鈍化が想定されるでしょう。
それがルピアの価値にネガティブな影響を与える可能性もあります。
注目されるのは、イスラエルとの関係です。
インドネシアはイスラエルを国家として公式に承認しておらず、イスラエルはインドネシアのOECD加盟に反対の立場。
宗教上の違いから交渉が難航し、遅延は避けられない見通しです。
インドネシアは他の加盟国に対する外交努力を強化し、多国間交渉を通じて支持を積み上げていくのが正攻法となるでしょう。
慢性的なルピア安からの脱却は容易ではなさそうです。
(吉池威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。