以下は、2018年5月17日に暗号通貨調査会社である株式会社バロック・ストリート(本社:六本木)がチェコ(プラハ)で開催された「ブロックチェーン・アンド・ビットコイン・カンファレンス」に参加した内容のレポートである。
本カンファレンスは国際イベント運営会社スマイルエキスポが主催となり欧州を中心に世界各国で開催されている。
今回は10カ国15名の登壇者がそれぞれテーマを決め、暗号通貨・ブロックチェーンを取り巻く現状、未来について議論がされた。
講演の合間にはこれから注目を集めるかもしれないICOプロジェクトによるピッチセッションがあり会場を盛り上げた。
以下では、当日の講演内容から一部を抜粋して紹介する。
○チェコにおける暗号通貨・ブロックチェーン環境
当日の司会を務めたシーン・パッターソン氏による開会挨拶ではチェコにおける暗号通貨・ブロックチェーンについて話があった。
チェコ(プラハ)は暗号通貨・ブロックチェーンに対して寛容であり、公的機関についてもフレキシブルに対応している。
投資家や企業にとってチェコ(プラハ)はこの分野で投資をする上で魅力的。
ビットコインの認知度についても高いだろうとのことであった。
そのことを示すようにチェコではプラハだけで30を超えるビットコインATMが設置されている。
○ビットコインの定義の難しさ
フィンテック企業ロックレンのチーフエコノミスト、そしてチェコ初のビットコイン本著者であるドミニク・ストローカル氏はビットコインの定義をテーマに講演した。
「今あるブロックチェーンはいわばビットコインブロックチェーンであり、ブロックチェーンの議論において、暗号通貨、その中でも特にビットコインにばかり焦点が当たっている。
」各コミュニティが対立し自分たちこそ真のブロックチェーンだなんだと言い合いするばかりでその本質的な議論が失われている。
確かにこの分野は技術的にも日々進化していてビットコインを定義するのは難しい。
しかし、世に普及する為にはまず法的さらには学術的な定義が必要であると彼は述べた。
○ビットコインの普及がまず進むのはPoS(Point of Sales)分野
決済系ICOプロジェクトグラフトの共同設立者ダン・イキス氏は暗号通貨の普及が進むのは店舗決済分野であると主張する。
クレジットやデビット決済市場が拡大する今日に先を見越して暗号通貨決済を導入する店舗もある中、その多くはビットコインの複雑さや送金手数料、承認速度、スケーラビリティ等を懸念している。
しかし、これらは全て暗号通貨自体の問題であり技術によって解消することができる。
これらを解消することができれば導入コスト、仲介コスト等を鑑みても暗号通貨決済が普及する未来は大いに考えられる。
○ブロックチェーン技術の応用
本カンファレンスでは様々なブロックチェーン技術の応用例が紹介された。
医療サプライチェーンへの応用を目指すコンピテックや人材仲介サービスへの応用を目指すヒドネ、デジタルIDへの応用を研究するCAテクノロジ—、そしてAI技術とブロックチェーン技術とを合わせ論文発行プロセスへの応用を目指すアイリス・ドット・アイなどである。
さらに外資大手IBMは報道でも見られた通りブロックチェーン研究、中でもハイパーレッジャープロジェクトを進めており国際貿易、食品検査等での応用を目指している。
○ブロックチェーン技術はイノベーションカーブを辿るか
Pwcリーガル・スイスのリーダーであるジェンター・ドブラズ氏によれば、スイスにおけるICO熱は冷めることなく会社としてICOの相談を受けること多いと言う。
ご存知の通り、スイスは暗号通貨・ブロックチェーン分野に寛容でありビジネス環境として非常に整っている。
そのような最先端の国でビジネスをする身として彼は、ブロックチェーン技術はインターネットやスマートフォン等と同様にイノベーションカーブを今後辿るだろうとの見解を示した。
そして、数ある暗号通貨についてもその変遷の中で、ジャンルごとに棲み分けが進むのではないかとのことである。
○ICOを取り巻く現状と今年の予想
クラウドホールディングの共同設立者アレックス・ボズヒノヴ氏は、現在の暗号通貨業界では米証券取引委員会(SEC)、価格情報サイトのコインマーケットキャップ(CMC)、大手取引所のコインベース、大手メディアのコインテレグラフが力を持つと分析する。
SECの規制に関する議論の動向次第では大きく業界は変化する。
取引高が増えCMCで上位になればより買い手は増えるだろう。
大手取引所への上場、大手メディアへの掲載となれば同様である。
このような状況下、ICO投資は非常に人気を集めている。
人気のあまり打ち切りになるICOもある程である。
問題は今後規制等により投資家が制限されることである。
極端なことを言えば、KYCをICOに持ち込むべきではない。
2018年はAirdropが新たなクラウドセールの手法として増えると個人的には考えている。
○現実世界と暗号通貨の世界との類似性
分散型インキュベータープラットフォームの構築を目指すアデルの共同設立者ガブリエル・デュシル氏は、暗号通貨の世界はヴァーチャルな世界であるが現実世界と似通った部分があり、非常に親和性のあるパンデミックな世界であると主張する。
現実世界における国家は領土、人口、関係性、ガバナンスで構成され、暗号通貨の世界はヴァーチャル、匿名、コミュニティ、プログラムとそれぞれ対応した形で構成される。
同様にそれはヒエラルキーについても言うことができる。
現実世界のヒエラルキーが政府、銀行、企業、 市民と並ぶのに対し、暗号通貨の世界ではプログラマ、マイナー、サービス、 トレーダー、 さらには市民(暗号通貨に馴染みのない人々)が続く。
近い将来クリプトイデオロギー(中央管理体のない分散型社会)を実現したボーダレスな世界が実現するだろう。
(記事提供:株式会社バロック・ストリート)
本カンファレンスは国際イベント運営会社スマイルエキスポが主催となり欧州を中心に世界各国で開催されている。
今回は10カ国15名の登壇者がそれぞれテーマを決め、暗号通貨・ブロックチェーンを取り巻く現状、未来について議論がされた。
講演の合間にはこれから注目を集めるかもしれないICOプロジェクトによるピッチセッションがあり会場を盛り上げた。
以下では、当日の講演内容から一部を抜粋して紹介する。
○チェコにおける暗号通貨・ブロックチェーン環境
当日の司会を務めたシーン・パッターソン氏による開会挨拶ではチェコにおける暗号通貨・ブロックチェーンについて話があった。
チェコ(プラハ)は暗号通貨・ブロックチェーンに対して寛容であり、公的機関についてもフレキシブルに対応している。
投資家や企業にとってチェコ(プラハ)はこの分野で投資をする上で魅力的。
ビットコインの認知度についても高いだろうとのことであった。
そのことを示すようにチェコではプラハだけで30を超えるビットコインATMが設置されている。
○ビットコインの定義の難しさ
フィンテック企業ロックレンのチーフエコノミスト、そしてチェコ初のビットコイン本著者であるドミニク・ストローカル氏はビットコインの定義をテーマに講演した。
「今あるブロックチェーンはいわばビットコインブロックチェーンであり、ブロックチェーンの議論において、暗号通貨、その中でも特にビットコインにばかり焦点が当たっている。
」各コミュニティが対立し自分たちこそ真のブロックチェーンだなんだと言い合いするばかりでその本質的な議論が失われている。
確かにこの分野は技術的にも日々進化していてビットコインを定義するのは難しい。
しかし、世に普及する為にはまず法的さらには学術的な定義が必要であると彼は述べた。
○ビットコインの普及がまず進むのはPoS(Point of Sales)分野
決済系ICOプロジェクトグラフトの共同設立者ダン・イキス氏は暗号通貨の普及が進むのは店舗決済分野であると主張する。
クレジットやデビット決済市場が拡大する今日に先を見越して暗号通貨決済を導入する店舗もある中、その多くはビットコインの複雑さや送金手数料、承認速度、スケーラビリティ等を懸念している。
しかし、これらは全て暗号通貨自体の問題であり技術によって解消することができる。
これらを解消することができれば導入コスト、仲介コスト等を鑑みても暗号通貨決済が普及する未来は大いに考えられる。
○ブロックチェーン技術の応用
本カンファレンスでは様々なブロックチェーン技術の応用例が紹介された。
医療サプライチェーンへの応用を目指すコンピテックや人材仲介サービスへの応用を目指すヒドネ、デジタルIDへの応用を研究するCAテクノロジ—、そしてAI技術とブロックチェーン技術とを合わせ論文発行プロセスへの応用を目指すアイリス・ドット・アイなどである。
さらに外資大手IBMは報道でも見られた通りブロックチェーン研究、中でもハイパーレッジャープロジェクトを進めており国際貿易、食品検査等での応用を目指している。
○ブロックチェーン技術はイノベーションカーブを辿るか
Pwcリーガル・スイスのリーダーであるジェンター・ドブラズ氏によれば、スイスにおけるICO熱は冷めることなく会社としてICOの相談を受けること多いと言う。
ご存知の通り、スイスは暗号通貨・ブロックチェーン分野に寛容でありビジネス環境として非常に整っている。
そのような最先端の国でビジネスをする身として彼は、ブロックチェーン技術はインターネットやスマートフォン等と同様にイノベーションカーブを今後辿るだろうとの見解を示した。
そして、数ある暗号通貨についてもその変遷の中で、ジャンルごとに棲み分けが進むのではないかとのことである。
○ICOを取り巻く現状と今年の予想
クラウドホールディングの共同設立者アレックス・ボズヒノヴ氏は、現在の暗号通貨業界では米証券取引委員会(SEC)、価格情報サイトのコインマーケットキャップ(CMC)、大手取引所のコインベース、大手メディアのコインテレグラフが力を持つと分析する。
SECの規制に関する議論の動向次第では大きく業界は変化する。
取引高が増えCMCで上位になればより買い手は増えるだろう。
大手取引所への上場、大手メディアへの掲載となれば同様である。
このような状況下、ICO投資は非常に人気を集めている。
人気のあまり打ち切りになるICOもある程である。
問題は今後規制等により投資家が制限されることである。
極端なことを言えば、KYCをICOに持ち込むべきではない。
2018年はAirdropが新たなクラウドセールの手法として増えると個人的には考えている。
○現実世界と暗号通貨の世界との類似性
分散型インキュベータープラットフォームの構築を目指すアデルの共同設立者ガブリエル・デュシル氏は、暗号通貨の世界はヴァーチャルな世界であるが現実世界と似通った部分があり、非常に親和性のあるパンデミックな世界であると主張する。
現実世界における国家は領土、人口、関係性、ガバナンスで構成され、暗号通貨の世界はヴァーチャル、匿名、コミュニティ、プログラムとそれぞれ対応した形で構成される。
同様にそれはヒエラルキーについても言うことができる。
現実世界のヒエラルキーが政府、銀行、企業、 市民と並ぶのに対し、暗号通貨の世界ではプログラマ、マイナー、サービス、 トレーダー、 さらには市民(暗号通貨に馴染みのない人々)が続く。
近い将来クリプトイデオロギー(中央管理体のない分散型社会)を実現したボーダレスな世界が実現するだろう。
(記事提供:株式会社バロック・ストリート)