朝鮮半島有事の際、円高か円安かで議論になったのは今年4月のことでした。
米朝間が戦争状態に突入する場合、核ミサイルが日本に撃ち込まれるとのシナリオが背景にありました。
それから3カ月しか経っていませんが、周辺国の関係は微妙に変化し、深刻さを増しているように思えます。
今年4月の米中首脳会談の最中、シリア政府軍が化学兵器を使用したとして、トランプ政権はシリア空軍基地を爆撃しました。
この行動をアメリカのメディアがこぞって賞賛したためか、トランプ大統領は次にミサイル発射で挑発を繰り返す北朝鮮に対し軍事攻撃を示唆し、一気に緊張が高まりました。
アメリカはこの時、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島付近に出動させたものの、具体的なアクションを起こすことは控え、代わりに中国に対し経済制裁などで北朝鮮に圧力をかけるよう求めました。
しかし、北朝鮮を擁護する中国は対話路線を継続しており、米中両国は足並みをそろえることができませんでした。
基本的に現在も両国のスタンスはかい離したままです。
北朝鮮は7月4日に長距離弾道ミサイルを発射し、翌5日は核実験実施の可能性が報じられ、再び朝鮮半島の地政学リスクが高まりました。
中国とロシアは北朝鮮を強く非難する一方、「北朝鮮の懸念にも理由がある」などと配慮をみせました。
北朝鮮の最高指導者、金正恩氏は4日のミサイル発射について、アメリカ独立記念日の「プレゼント」と余裕さえ感じさせるコメントをしています。
トランプ大統領は、この金正恩氏に関し4月のメディアのインタビューでは「若いのに大したものだ」などと述べ、その後は「単なる狂人」と評するなど、定見を持っていないことがわかりました。
今回の長距離ミサイル発射に際してはツイッターで「他にやることがないのか」と他人事のようにつぶやいています。
こうした言動から、同大統領が北朝鮮問題に知識も戦略もないことを、中ロや北朝鮮に見透かされたように見えます。
この3カ月でトランプ大統領が学んだことは、北朝鮮に対して「簡単に手を出せない」ということだけのようです。
残念ながら、同大統領が東アジアの諸問題について的確に理解し、自国や同盟国の利益のために思慮深い行動を取ることは望めそうにありません。
中東湾岸地域でのカタール断交と同様、東アジア地域では混迷の度合いをさらに深めたと言えるでしょう。
それでもアメリカは、北朝鮮のミサイル発射に「厳しい対応」を検討するとしています。
米朝のチキンレースの末、北朝鮮が韓国や日本を標的に破れかぶれで攻撃するシナリオは現実味を増したのではないでしょうか。
円高か円安かといった議論をする段階を通り越したかもしれません。
最悪の事態を回避するには、米中露が対話路線で歩調を合わせる以外に道はないように思えます。
(吉池 威)
米朝間が戦争状態に突入する場合、核ミサイルが日本に撃ち込まれるとのシナリオが背景にありました。
それから3カ月しか経っていませんが、周辺国の関係は微妙に変化し、深刻さを増しているように思えます。
今年4月の米中首脳会談の最中、シリア政府軍が化学兵器を使用したとして、トランプ政権はシリア空軍基地を爆撃しました。
この行動をアメリカのメディアがこぞって賞賛したためか、トランプ大統領は次にミサイル発射で挑発を繰り返す北朝鮮に対し軍事攻撃を示唆し、一気に緊張が高まりました。
アメリカはこの時、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島付近に出動させたものの、具体的なアクションを起こすことは控え、代わりに中国に対し経済制裁などで北朝鮮に圧力をかけるよう求めました。
しかし、北朝鮮を擁護する中国は対話路線を継続しており、米中両国は足並みをそろえることができませんでした。
基本的に現在も両国のスタンスはかい離したままです。
北朝鮮は7月4日に長距離弾道ミサイルを発射し、翌5日は核実験実施の可能性が報じられ、再び朝鮮半島の地政学リスクが高まりました。
中国とロシアは北朝鮮を強く非難する一方、「北朝鮮の懸念にも理由がある」などと配慮をみせました。
北朝鮮の最高指導者、金正恩氏は4日のミサイル発射について、アメリカ独立記念日の「プレゼント」と余裕さえ感じさせるコメントをしています。
トランプ大統領は、この金正恩氏に関し4月のメディアのインタビューでは「若いのに大したものだ」などと述べ、その後は「単なる狂人」と評するなど、定見を持っていないことがわかりました。
今回の長距離ミサイル発射に際してはツイッターで「他にやることがないのか」と他人事のようにつぶやいています。
こうした言動から、同大統領が北朝鮮問題に知識も戦略もないことを、中ロや北朝鮮に見透かされたように見えます。
この3カ月でトランプ大統領が学んだことは、北朝鮮に対して「簡単に手を出せない」ということだけのようです。
残念ながら、同大統領が東アジアの諸問題について的確に理解し、自国や同盟国の利益のために思慮深い行動を取ることは望めそうにありません。
中東湾岸地域でのカタール断交と同様、東アジア地域では混迷の度合いをさらに深めたと言えるでしょう。
それでもアメリカは、北朝鮮のミサイル発射に「厳しい対応」を検討するとしています。
米朝のチキンレースの末、北朝鮮が韓国や日本を標的に破れかぶれで攻撃するシナリオは現実味を増したのではないでしょうか。
円高か円安かといった議論をする段階を通り越したかもしれません。
最悪の事態を回避するには、米中露が対話路線で歩調を合わせる以外に道はないように思えます。
(吉池 威)