若者を中心に、世界的に利用者が増えている短編動画アプリTikTok(ティックトック、中国語・抖音)。
世界で月間5億人のアクティブユーザーを抱え、日本でも1000万人が利用している。
中国の北京字節跳動科技(バイトダンス、Bytedance)が始めたこのアプリは、中国当局のサイバー監視のため、個人情報の収集に協力している。
ブルームバーグによると、北京字節跳動は2018年10月には、企業の評価額が750億ドルとされ、世界で最も価値のある新興企業になった。
TikTokは、撮影された人の姿や風景などを音楽、フィルタで装飾加工して、15~60秒の短編動画をネットで共有するサービス。
専門的な技術はいらない「口パク」「手まね」でも容易に娯楽動画を作れる手軽さから、2016年の発表以降、10~20代を中心に急速に人気が高まった。
米カリフォルニア州アナハイムでは毎夏、動画共有大手ユーチューブ(YouTube)が主催する10代、20代のSNSのインフルエンサー(発信力・影響力のあるSNSユーザー)や動画共有愛好者が集まるイベント「VidCon」が開かれる。
この7月12日、同イベントは10年もの間、ユーチューブの人気者が注目を集めていたが、今年はTikTokの愛好者がその人気を奪った。
人気の秘密は、コンテンツの特徴のみならず広告収入にもあるようだ。
利用者がYouTubeに挙げた動画で得る広告料は、同社の親会社であるグーグル(Google)が設定する。
しかし、TikTokは直接企業が広告を打つため、TikTokインフルエンサーは「仲買人」を通さず、遥かに高い広告収入を得られるという。
いっぽう、中国発のこのアプリには、安全保障上の懸念があると指摘されている。
若い米軍人やスタッフが軍用施設内で撮影したTikTok動画は、米国の機密情報が中国側に渡っている可能性があると、米ワシントンDCに拠点を置くピーターソン国際経済研究所は指摘する。
同所は2019年1月発表のTikTokに関する調査報告で、「TikTokは中国当局に対し、個人情報や位置情報のほか、各国の軍事施設などの機密情報を提供している可能性が高い」と分析している。
中国共産党政権が制定した国家情報法、サイバーセキュリティ法によれば、企業は官民問わず、収集した個人情報を含むデータを中国情報当局に提出するよう義務づけられている。
共産党政権下の中国は世界でもっとも厳しい市民監視を行う国家であり、AIを備えた公共監視ビデオカメラ、携帯電話のやりとりなどを通じて市民の動きを監視している。
さらに、市民のDNA情報も収集している。
英字メディアAxiosによると、中国のAI大手企業は「強力で有効な予測モデルを構築する」ために、中国14億人の市民をサイバー監視するうえ、海外のデータも「取り込む」ことで、文化的な差異も認識し、AI予測の有効性を高めるという。
ワシントンDC拠点のシンクタンク・ニューアメリカのデジタル経済担当グラハム・ウェブスター(GrahamWebster)氏は同所の公式サイトで発表した見方として、中国の公共政策目標は、自国のオンライン世論監視機能を強化して、社会的ガバナンス機能を向上させ、国家安全保障を確保するためにAI技術を駆使している、と書いた。
ウェブスター氏は、米国でも利用者数の多いTikTokのAI機能が、米国の重大な安全保障リスクに関わると警告する。
2019年2月、米政府はTikTokに対して、13歳未満の子どもの個人情報を違法収集していたとして、米連邦取引委員会(FTC)に訴訟した。
FTCはTikTokを和解金570億ドル(約6億3200万円)の支払いに合意させた。
(編集・佐渡道世)【ニュース提供・大紀元】