[ニューヨーク 31日 ロイター] - 銀行危機の中、米国株式市場は第1・四半期に力強い上昇を見せた。ただ一部の投資家は、広く予想されている通りにリセッション(景気後退)が到来すれば米国株は圧力にさらされると警戒感を示している。
2022年には20%近く下落したS&P総合500種指数は、第1・四半期は7%上昇した。ナスダックは第1・四半期に16.8%上昇、四半期としては20年以来の大幅高となった。
投資家は、こうした底堅さを理由に株式のリセッションへの脆弱性が高まったと指摘する。バリュエーションが歴史的な水準に高止まりしているほか、リセッションとなれば企業収益も打撃を受けるからだ。
フィデューシャリー・トラストのハンス・オルセン最高投資責任者(CIO)は「市場はリセッションを全く織り込んでいない」とし、株式について「向こう数四半期に極めて不快なサプライズに見舞われるかもしれない」と話す。同社は通常よりキャッシュの持ち高を増やし、将来の市場動揺に備えているという。
株価がどの程度リセッションの可能性を織り込んでいるのか、リセッションが起こるのかどうかは市場で議論の的になっている。指標は今年に入って好調で、米連邦準備理事会(FRB)による一連の利上げにもかかわらず、米経済はごく穏やかなリセッションに陥るだけで済む、もしくはリセッションを回避できると期待感も広がった。
先の銀行セクターの混乱で懸念は再び高まった。一部のアナリストは、FRBの引き締めの影響が出始めているときに銀行へのストレスが強まったことで、経済に圧力がかかりかねないとしている。
その結果、投資家は企業収益などの主要指標に改めて注目するようになっている。向こう数四半期の利益見通しは既に低調だが、リセッションになれば一段と悪化する可能性があるとの指摘も一部で聞かれる。
モルガン・スタンレーのストラテジストはリポートで、最近の銀行危機の前ですら企業利益の予想値は15─20%過大だったと指摘。その上で「過去数週間のイベントを踏まえると、株式が今後はるかに低い利益予想を織り込むリスクが高まっている」との見方を示した。
リフィニティブのデータによると、S&P500採用企業の利益は第1・四半期、前年同期比5%減少したと予想されており、第2・四半期は同3.9%の減益が見込まれている。ネッド・デービス・リサーチによると、企業利益はリセッション時に平均で年24%減少している。
米企業の第1・四半期決算は、向こう数週間で発表が本格化する。