〇米大統領選直前、新たなポジション形成模索。
決算相場優勢か〇
ほとんど話題にならないが、今週は日銀政策決定会合(10/31-11/1)、米FOMC(11/1-11/2)、英中銀報告書(11/3)、米雇用統計・貿易収支(11/4)と金融政策を巡るイベントが続く。
28日の米7-9月期GDP速報が+2.9%と市場予想の+2.5%を上回り(押し上げ材料は大豆の輸出増と在庫投資なので心許ないが)、12月利上げ確率が一時83%まで上昇、米10年債国債利回りは1.8486%と高止まりしている。
イベントで大きな動きはなく、利上げ目線は変わらないと見られている。
ただ、FBIがクリントン氏の電子メール問題の捜査再開を表明。
短中期債利回りは低下(一時0.9%の5ヵ月ぶり高水準から0.8566%に急低下、前日の0.884%を下回った)、ドルも急落(ドル円はGDP速報で105.53円となった後、104.49円)。
株価は小幅安で持ち堪えたが、大統領選への警戒ムードが出た。
30日発表のABC・ワシントンポスト調査で、支持率はクリントン氏46%、トランプ氏45%と僅差(1週間前は12ポイント差)。
態度を決めかねていた共和党支持者、クリントン氏に批判的な人々をトランプ氏に傾けさせたと見られている。
国務長官候補と伝えられたバイデン副大統領は政権入りを否定、クリントン政権になっても不安定との見方も影響していると見られる。
ただし、トランプ氏にはブラジル検察当局がトランプ氏経営の不動産会社にリオデジャネイロ港の大規模再開発で汚職関与疑惑があると表明。
双方の直前報道で市場が揺れるリスクがある。
投機筋の売りポジションはメキシコ・ペソからユーロにシフトしている。
「トランプ・ポジション」(国境の壁とNAFTA批判でメキシコ・ペソ売り)から、12月のECB緩和延長(現行の緩和策は17年3月期限)を睨むシフトと見られる。
IMM通貨先物建玉は、メキシコペソの売り越しがが9/20の8万9342枚から10/25時点で2万5343枚に急減。
一方、ユーロ売り越しは9/27時点の7万6030枚から10/25は12万3856枚に増加している。
ヘッジ的に買われていた円の買い越しは9/27の6万8892枚から10/18に3万6991枚に減少後、7604枚増加した(104円台が重かった原因の一つと見られる)。
一方向ではなく、売り買い交錯の局面と見られる。
他に、OPEC減産の詳細合意ができないのではないか(総会は11/30。
結局はサウジが減産するかどうかになると見られている)との見方で、原油先物相場は50ドル/バレル割れ。
独VWに関し、「欧州委員会が排ガス不正を直すソフトウェアの修正がエンジン損傷につながる可能性があると懸念」と独シュピーゲル誌が伝えた。
賠償金問題もあり、VW問題は終わっていない。
アジアでは、韓国・朴政権が「影の実力者」への情報提供問題で存亡の危機、インドとパキスタンが相互に外交官を追放、カシミール問題で緊張が高まっている。
「核心」となった習主席が打ち出す改革方針に、中国は静かな緊張状態。
一方、今週も決算発表ラッシュ。
時事通信調べで、既に発表した東証1部270社のうち、17年3月期予想を下方修正した企業は78社、上方修正は47社。
多いと見るか、全滅ではないと見るか微妙なところ。
米国では上振れが進み、S&P500企業の増益率は3.0%に拡大(エネルギー除くと+6.7%)。
発表済みは290社で73%がアナリスト予想を上回り、株価の支えになっていると考えられる。
全体の動きが乏しければ、決算相場が続くものと想定される。
以上
(フィスコ客員ストラテジスト 一尾仁司)
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/10/31号)