■今後の見通し
1. 2019年2月期の業績見通し
システムインテグレータ (T:3826)の2019年2月期の業績は、売上高が前期比6.2%増の4,000百万円、営業利益が同1.0%増の500百万円、経常利益が同1.3%増の503百万円、当期純利益が同0.6%増の348百万円と増収増益基調が続く見通し。
利益の伸びが微増にとどまるが、これは今後の成長に向けた新製品の開発投資などの戦略投資を前期の150百万円から430百万円に拡大することが要因となっている。
半期ベースで見ると、上期は増収減益となるが下期は増収増益に転じる見込み。
2019年2月期の戦略投資の内訳として、AI関連投資で60百万円、製品開発投資で300百万円、生産性向上のための投資で70百万円を計画している。
具体的な投資内容は以下のとおり。
(1) AI関連投資
AI関連投資として2019年2月期は60百万円を計画している。
新サービスとして、サーチ&ナレッジAIサービス「AISI∀ CompanyList」と、異常検知AIサービス「AISI∀ AnomalyDetection」の開発に取り組んでいく。
「AISI∀ CompanyList」については2018年秋のサービス開始を予定している。
インターネット上の企業ページを24時間クローリング(徘徊)し、スクレイピング(情報抽出)した業務概要や製品・サービス等の企業ページの文章をAIが読み取り、業界や業種を自動でタグ付けすることで、業種ごとの最新の会社情報データベースを自動で作成するサービスとなる。
企業が見込み顧客、資材の調達先、競合企業などを調べる際に、従来は(株)東京商工リサーチ等の企業データベース会社から高コストで入手していたものを、人手をかけずに低コストで該当する情報を得られることになり、潜在的なニーズは大きいと見られる。
同社では販売開始後、5年間で約500百万円の販売を見込んでいる。
一方、「AISI∀ AnomalyDetection」については2018年中の完成、2019年2月期中のサービス開始を目指している。
技術的には「AISI∀ FlowerName」と同じく画像認識AI技術を使ったものとなる。
具体的なサービス内容は不明だが、画像認識技術を用いた異常検知サービスは複数の企業が開発、提供しているため、どのような差別化を図ったサービスとなるかが注目される。
(2) 製品開発投資
製品開発投資として2019年2月期は300百万円を計画している。
例年50百万円前後のため、同社にとっては多額な開発投資となる。
このうち、約半分は「GRANDIT」の「生産管理アドオンモジュール」の機能強化に充当する。
同製品は製造業向けを主な顧客対象としてきたが、追加要求される機能が増えてきたことや、ここ最近は建設工事会社などからの引き合いも増加傾向にあり、カスタマイズで対応する案件が増えてきたことが背景にある。
同社では、ニーズの高い機能を標準装備し、建設業にも対応したパッケージ品にバージョンアップすることで、製品の競争力並びに生産性向上を実現していく考えだ。
また、「Object Browser」シリーズ等の既存製品のバージョンアップのほか、RPA関連サービスの開発も進めていく。
同社がRPAサービスを開発するのではなく、RPAを開発する技術者向けの育成支援サービスや、「GRANDIT」ユーザーに対して協業先のRPAサービス※をソリューション提案していくことを想定している。
※2018年4月18日付で、東芝情報システム(株)と「GRANDIT」のビジネス・セールスパートナー契約を締結し、東芝情報システムのRPAツールと「GRANDIT」を組み合わせたソリューション展開で協業していくことを発表している。
(3) 生産性向上
生産性向上を目的とした投資として2019年2月期は70百万円を計画している。
人材育成やマーケティング機能、経営管理機能を強化するためのIT投資、RPAの活用による業務効率の向上などに取り組んでいく。
なお、従業員数について2018年4月に新卒者7名を採用し、中途採用者も含めると2019年2月期は前期末比で20名弱の増員を予定している。
2019年2月期はEC・オムニチャネル事業と「OBPM」がけん引
2. 事業セグメント別見通し
(1) Object Browser事業
Object Browser事業は売上高、営業利益ともに前期比10%前後の成長を見込んでいる。
「SI Object Browser」シリーズについては微増収にとどまるが、「OBPM」が2ケタ増収と再加速する。
前期に採用した営業スタッフが戦力化し始め、直近で契約数が伸び始めているためだ。
機能を限定した「ライト版」の需要もさらに拡大が見込まれる。
なお、「OBDZ」については課題であったパフォーマンス向上のため、リニューアルを行っており、2019年2月期末頃に完成する見込みとなっている。
現在の製品はパフォーマンスが十分発揮できないという課題があった。
リニューアル製品が完成すればパフォーマンスが大幅に改善し、ユーザーの使い勝手も向上する。
このため、2019年2月期については売上増をほとんど見込んでいないが、2020年2月期以降は「AISI∀-DR」との連携販売も進めていくことで、本格的に拡大していくものと予想される。
(2) EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業は売上高、営業利益ともに前期比7〜8%の成長を見込んでいる。
ECサイト構築に関する引き合いが引き続き旺盛で、コンスタントに受注を獲得できている状況にある。
大手企業だけでなく、EC専業事業者も流通額の拡大によって、従来よりも大規模なトランザクション処理に対応可能で、かつ高いセキュリティ水準を確保できるECサイトの構築ニーズが高まっていることが背景にある。
同社ではこうしたニーズを確実に取り込んでいくことで、早期に売上高で1,000百万円を達成していくことを目標としている。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前期比3%増、営業利益は横ばい水準で見込んでいる。
2019年2月期は前述したように「生産管理アドオンモジュール」等の製品開発投資に注力する1年と位置付けており、人的リソースを自社製品開発に優先するため、売上高の成長は一時的に鈍化する計画となっている。
また、開発要員の増員や協力パートナーの育成なども継続しており、製品開発が完了する2020年2月期以降は再び2ケタ成長に復帰する見通しとなっている。
(4) その他
新規事業について、AIサービスの「AISI∀-CompanyList」については2018年秋からの販売開始となるためほとんど計画に織り込んでいないが、「TOPSIC」については数千万円程度の売上高が見込まれる。
ただ、利益面ではAIサービスの開発投資が先行するため、損失は継続する見通し。
「TOPSIC」については2018年1月の販売開始以降、引き合いは好調のようだ。
想定していなかった会社からのトライアル申込みも入ってきている状況で、4月末時点の導入社数は16社と毎月5社強のペースで増加している。
2019年2月期は60社への導入を目指しているが、今のペースで行けば十分上回るものと予想される。
「TOPSIC」の販売については人手をかけず、自社Webサイトを通じたオンライン上で完結する販売スタイルで、今後も導入事例やニュースリリースなどを出して、認知度の向上を図りながら拡販を続けていく格好となる。
また、2018年5月からは顧客ターゲットが重なる「OBPM」の営業部隊でも販売活動を開始したほか、「SI Object Browser」シリーズや「OBPM」の既存顧客に対してもこれから本格的にメール等の販促活動に取り組んでいく方針となっている。
国内のIT業界でシステムエンジニアは慢性的に不足している状況が続いており、システム開発企業は優秀な人材の獲得(外国人技術者を含む)と社内育成が喫緊の経営課題となっている。
また、学校教育分野でもプログラミング授業が2020年度から小学校で必修化されるなど、今後ますますプログラミング教育に関する需要が拡大していくものと予想される。
こうした市場環境下において、同社のサービスに対する潜在的なニーズは大きく、今後、急成長する可能性があると弊社では注目している。
なお、プログラミングスキル判定サービスの競合としては、2年程度早く開始した(株)ギブリーの「Track」というサービスがある。
同社サービスとの違いは、カバーする範囲が上流の設計分野からプログラミング分野まで広範にわたり、サービス料金も割高となっている点が挙げられる(基本料金で年間60万円と同社比2倍)。
このため、プログラミングスキルに特化したサービスでは、価格面で優位性があると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
1. 2019年2月期の業績見通し
システムインテグレータ (T:3826)の2019年2月期の業績は、売上高が前期比6.2%増の4,000百万円、営業利益が同1.0%増の500百万円、経常利益が同1.3%増の503百万円、当期純利益が同0.6%増の348百万円と増収増益基調が続く見通し。
利益の伸びが微増にとどまるが、これは今後の成長に向けた新製品の開発投資などの戦略投資を前期の150百万円から430百万円に拡大することが要因となっている。
半期ベースで見ると、上期は増収減益となるが下期は増収増益に転じる見込み。
2019年2月期の戦略投資の内訳として、AI関連投資で60百万円、製品開発投資で300百万円、生産性向上のための投資で70百万円を計画している。
具体的な投資内容は以下のとおり。
(1) AI関連投資
AI関連投資として2019年2月期は60百万円を計画している。
新サービスとして、サーチ&ナレッジAIサービス「AISI∀ CompanyList」と、異常検知AIサービス「AISI∀ AnomalyDetection」の開発に取り組んでいく。
「AISI∀ CompanyList」については2018年秋のサービス開始を予定している。
インターネット上の企業ページを24時間クローリング(徘徊)し、スクレイピング(情報抽出)した業務概要や製品・サービス等の企業ページの文章をAIが読み取り、業界や業種を自動でタグ付けすることで、業種ごとの最新の会社情報データベースを自動で作成するサービスとなる。
企業が見込み顧客、資材の調達先、競合企業などを調べる際に、従来は(株)東京商工リサーチ等の企業データベース会社から高コストで入手していたものを、人手をかけずに低コストで該当する情報を得られることになり、潜在的なニーズは大きいと見られる。
同社では販売開始後、5年間で約500百万円の販売を見込んでいる。
一方、「AISI∀ AnomalyDetection」については2018年中の完成、2019年2月期中のサービス開始を目指している。
技術的には「AISI∀ FlowerName」と同じく画像認識AI技術を使ったものとなる。
具体的なサービス内容は不明だが、画像認識技術を用いた異常検知サービスは複数の企業が開発、提供しているため、どのような差別化を図ったサービスとなるかが注目される。
(2) 製品開発投資
製品開発投資として2019年2月期は300百万円を計画している。
例年50百万円前後のため、同社にとっては多額な開発投資となる。
このうち、約半分は「GRANDIT」の「生産管理アドオンモジュール」の機能強化に充当する。
同製品は製造業向けを主な顧客対象としてきたが、追加要求される機能が増えてきたことや、ここ最近は建設工事会社などからの引き合いも増加傾向にあり、カスタマイズで対応する案件が増えてきたことが背景にある。
同社では、ニーズの高い機能を標準装備し、建設業にも対応したパッケージ品にバージョンアップすることで、製品の競争力並びに生産性向上を実現していく考えだ。
また、「Object Browser」シリーズ等の既存製品のバージョンアップのほか、RPA関連サービスの開発も進めていく。
同社がRPAサービスを開発するのではなく、RPAを開発する技術者向けの育成支援サービスや、「GRANDIT」ユーザーに対して協業先のRPAサービス※をソリューション提案していくことを想定している。
※2018年4月18日付で、東芝情報システム(株)と「GRANDIT」のビジネス・セールスパートナー契約を締結し、東芝情報システムのRPAツールと「GRANDIT」を組み合わせたソリューション展開で協業していくことを発表している。
(3) 生産性向上
生産性向上を目的とした投資として2019年2月期は70百万円を計画している。
人材育成やマーケティング機能、経営管理機能を強化するためのIT投資、RPAの活用による業務効率の向上などに取り組んでいく。
なお、従業員数について2018年4月に新卒者7名を採用し、中途採用者も含めると2019年2月期は前期末比で20名弱の増員を予定している。
2019年2月期はEC・オムニチャネル事業と「OBPM」がけん引
2. 事業セグメント別見通し
(1) Object Browser事業
Object Browser事業は売上高、営業利益ともに前期比10%前後の成長を見込んでいる。
「SI Object Browser」シリーズについては微増収にとどまるが、「OBPM」が2ケタ増収と再加速する。
前期に採用した営業スタッフが戦力化し始め、直近で契約数が伸び始めているためだ。
機能を限定した「ライト版」の需要もさらに拡大が見込まれる。
なお、「OBDZ」については課題であったパフォーマンス向上のため、リニューアルを行っており、2019年2月期末頃に完成する見込みとなっている。
現在の製品はパフォーマンスが十分発揮できないという課題があった。
リニューアル製品が完成すればパフォーマンスが大幅に改善し、ユーザーの使い勝手も向上する。
このため、2019年2月期については売上増をほとんど見込んでいないが、2020年2月期以降は「AISI∀-DR」との連携販売も進めていくことで、本格的に拡大していくものと予想される。
(2) EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業は売上高、営業利益ともに前期比7〜8%の成長を見込んでいる。
ECサイト構築に関する引き合いが引き続き旺盛で、コンスタントに受注を獲得できている状況にある。
大手企業だけでなく、EC専業事業者も流通額の拡大によって、従来よりも大規模なトランザクション処理に対応可能で、かつ高いセキュリティ水準を確保できるECサイトの構築ニーズが高まっていることが背景にある。
同社ではこうしたニーズを確実に取り込んでいくことで、早期に売上高で1,000百万円を達成していくことを目標としている。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前期比3%増、営業利益は横ばい水準で見込んでいる。
2019年2月期は前述したように「生産管理アドオンモジュール」等の製品開発投資に注力する1年と位置付けており、人的リソースを自社製品開発に優先するため、売上高の成長は一時的に鈍化する計画となっている。
また、開発要員の増員や協力パートナーの育成なども継続しており、製品開発が完了する2020年2月期以降は再び2ケタ成長に復帰する見通しとなっている。
(4) その他
新規事業について、AIサービスの「AISI∀-CompanyList」については2018年秋からの販売開始となるためほとんど計画に織り込んでいないが、「TOPSIC」については数千万円程度の売上高が見込まれる。
ただ、利益面ではAIサービスの開発投資が先行するため、損失は継続する見通し。
「TOPSIC」については2018年1月の販売開始以降、引き合いは好調のようだ。
想定していなかった会社からのトライアル申込みも入ってきている状況で、4月末時点の導入社数は16社と毎月5社強のペースで増加している。
2019年2月期は60社への導入を目指しているが、今のペースで行けば十分上回るものと予想される。
「TOPSIC」の販売については人手をかけず、自社Webサイトを通じたオンライン上で完結する販売スタイルで、今後も導入事例やニュースリリースなどを出して、認知度の向上を図りながら拡販を続けていく格好となる。
また、2018年5月からは顧客ターゲットが重なる「OBPM」の営業部隊でも販売活動を開始したほか、「SI Object Browser」シリーズや「OBPM」の既存顧客に対してもこれから本格的にメール等の販促活動に取り組んでいく方針となっている。
国内のIT業界でシステムエンジニアは慢性的に不足している状況が続いており、システム開発企業は優秀な人材の獲得(外国人技術者を含む)と社内育成が喫緊の経営課題となっている。
また、学校教育分野でもプログラミング授業が2020年度から小学校で必修化されるなど、今後ますますプログラミング教育に関する需要が拡大していくものと予想される。
こうした市場環境下において、同社のサービスに対する潜在的なニーズは大きく、今後、急成長する可能性があると弊社では注目している。
なお、プログラミングスキル判定サービスの競合としては、2年程度早く開始した(株)ギブリーの「Track」というサービスがある。
同社サービスとの違いは、カバーする範囲が上流の設計分野からプログラミング分野まで広範にわたり、サービス料金も割高となっている点が挙げられる(基本料金で年間60万円と同社比2倍)。
このため、プログラミングスキルに特化したサービスでは、価格面で優位性があると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)