トランプ政権発足前から取りざたされていたロシアゲート問題が一応決着し、国際金融市場でのドル売り要因が1つ取り除かれました。
今後の最も大きな影響として、来年の大統領選に向けトランプ大統領が世論を味方につける可能性があります。
2016年の大統領選で、当時共和党候補だったトランプ氏がロシア政府と共謀し、民主党のクリントン候補の信用を失墜させる内容のメールを流出させた、などとするロシア疑惑問題にピリオドが打たれました。
バー司法長官は3月24日、同問題を捜査してきたモラー特別検察官の報告書を議会に送付。
トランプ陣営とロシアとの共謀を認定できず、トランプ大統領の司法妨害を証拠不十分としました。
それに対し、民主党と反トランプの主流派メディアはいっせいに反発。
この捜査がトランプ大統領を罷免に追い込むための手がかりを導き出せると期待していただけに、今度はモラー氏を議会に呼んで追及するべきと主張しています。
一方のトランプ大統領は、身の潔白が証明されたと胸を張り、同時にこの問題で自身を最初からクロと決めつけたように報じてきたメディアに対し反撃に乗り出しました。
ロシアゲート問題を簡単に整理してみましょう。
大統領選で民主党のクリントン陣営はサイバー攻撃を受け、選挙結果に影響を与える極秘の内容が流出したため、対立候補であるトランプ氏の陣営とロシアとの共謀に疑いの目が向けられます。
トランプ大統領が選挙後にこの問題を捜査していた連邦捜査局(FBI)に圧力をかけコミー長官(当時)を更迭したなど「司法妨害」の疑惑も持ち上がり、事態はこじれていきます。
大統領選で多くのインテリ層が勝利を疑わなかったクリントン氏が予想に反して敗北したことで、トランプ大統領への憎悪は膨れ上がったのかもしれません。
この問題をめぐり、民主党だけでなく反トランプのメディアが、本来なら国家や国民にとって恥さらしであるはずの現職大統領の弾劾、辞任へ躍起になっていたように見えます。
反面、この問題の加熱した“報道”はかえってトランプ離れを抑制する効果をもたらしたようです。
昨年11月の中間選挙で、民主党支持者やメーンストリームメディアはトランプ大統領やその支持者を激しく非難し、共和党の勢力縮小を目論みます。
ところが、「民主党・メディア連合」が想定していたほどトランプ政権への逆風は強くありませんでした。
結局、民主党は下院で議席を伸ばしたものの、罷免決議などに影響のある上院では共和党が多数派を維持しています。
主流派メディアはロシアゲート疑惑でトランプ政権を倒すことに失敗したものの、「次の材料」を探し始めています。
しかし、メディアを「フェイクニュース」の巣窟と非難するトランプ大統領に多くの有権者は同調するのではないでしょうか。
最近のある世論調査でこの捜査を「魔女狩り」と思う無党派が半数を上回りました。
選挙戦が本格化し、メディアが政権批判を強めるほど、トランプ大統領に追い風が吹くとみます。
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。