米中貿易関係が急激に悪化し、米国株式市場は昨年12月初め以来最大の日次下げ幅となった。
ダウ平均株価は1000ポイント近く下げた後、買いが入り下げ止まる形となった。
それでもダウ平均株価は2.9%の下落、S&P500は3.0%近くの下落、ナスダック総合も3.5%近くの下落となり、これら主要指数は年初来最大の下落率を見せる結果となった。
5日にこれら3指数は、3週間前に記録した最高値から全て6%下落することとなった。とは言え、年初来でダウ平均株価は10.3%高、S&P 500は13.5%高、ナスダックは16.4%高となっている。
5日にトランプ政権が中国を為替操作国に指定したことから、6日の市場は更なる混乱が予想される。米国によるこの動きはIMFも事態に関与させようとする狙いがある。ダウ平均株価先物は、米国時間5日の午後6時30分時点(6日午前3時30時点)で350ポイント下がり、S&P 500先物は33ポイント下がった。
5日の下落は、中国が米国による追加関税表明への報復措置として人民元を切り下げた事に端を発している。これにより、(米ドル/人民元)は1ドル=7元となった。ドル高による中国での米国製品の価格上昇、人民元安による米国での中国製品の価格低下が引き起こる。
更に、中国政府は中国国営企業に米国産農産物の輸入停止を命じた。トランプ米大統領は先週、中国が合意を破り米国産農産物(特に大豆)の輸入を増加させていないことを非難していた。
先週の米中通商協議が目立った成果もなく終了した後、トランプ米大統領は追加関税実施を表明した。WSJ紙は、同氏の決定は側近からは反対されたと報じている。
国際貿易に関して強硬なリーダーシップをとる中国は、我々は屈しないと述べている。
ダウ平均株価を構成する全30銘柄が下落し、最大の下落幅を見せたアップル(NASDAQ:AAPL)は5%超の下落となった。同社下落によりダウ平均株価は70ポイント下がり、全体で767ポイント下げた。
更に、S&P 500構成銘柄の中で12社のみが上昇した。一方で、ナスダック総合指数の構成銘柄は全て下がり、277ポイントの減少、3.6%安となった。アップルの下落、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)の3.5%安、アマゾン(NASDAQ:AMZN)の3.2%安などが下落全体の3分の1以上を占めた。
このような株式市場のパフォーマンスは、1年以上続く米中貿易戦争だけではなく、世界各地で発生する貿易上の諸問題によって不安視される世界経済の減速懸念を反映している。日本と韓国は現在、韓国製品の動力源として必要としている半導体の販売を巡って争いを繰り広げている。
米国と欧州では、自動車部品を巡っての交渉が難航している。
加えて、米国経済は年率3%弱の成長に留まっており、税制改正法案により更に高い成長率を求めていた米国政府は不満を抱いている。
株式の下落により安全資産への需要が高まり、金利は世界中で減少した。米10年国債利回りは2日の1.855%から1.735%へと減少した。ドイツ国債は全ての年限で利回りがマイナスとなった。
金先物は安全資産としての安定的な役割を果たし、先物取引で1.3%高の1,476.50ドルとなった。
WTI原油先物は97セント安または1.7%安の1バレルあたり54.69ドルとなった。
ブレント原油先物は2.05ドル安または3.3%安の1バレルあたり59.81ドルとなった。
6日には、多くの決算報告が予定されている。中でも注目の決算が、市場引け後予定のウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)は第3四半期決算報告だ。映画の大ヒットに支えられ、予想売上高:215億ドル、予想EPS:1.72ドル(前年同期:1.87ドル)となっている。
なお同社株式は年初来26%高となっている。
中国マカオでカジノを操業するウィン・リゾーツ(NASDAQ:WYNN)の決算も予定されている。同社株は米中貿易戦争の煽りを受け、年初来7.2%高となっている。
S&P 500の勝者と敗者
タイソン・フーズ(NYSE:TSN)、化学メーカーのリンデ(NYSE:LIN)、製薬会社のアビオメッド(NASDAQ:ABMD)は5日の取引でトップパフォーマンスであった。
ネクター・セラピューティクス (NASDAQ:NKTR)、ウィンリゾーツ、中国インターネットサービスのバイドゥ(NASDAQ:BIDU)は5日の取引でワーストパフォーマンスであった。