[ニューヨーク 25日 ロイター] - 米エネルギー株の投資家にとって、先行き安心できる要素は乏しいかもしれない。米国株の強気相場が続く中でも、かつて人気を集めたエネルギー株は今や値動きが最もさえないセクターに転落し、世界経済の減速に直面しているほか、地球温暖化に伴って化石燃料産業に投資することへの疑念が浮上するという逆風にもさらされている。
S&P総合500種の11セクターを比較すると、エネルギー (SPNY)は今年に入って最低の成績だ。トランプ氏が2016年の大統領選挙に勝利して以降、あるいは10年余り前に米国株の強気相場が始まって以降で見ても、一番不振だった。
その結果、リフィニティブ・データストリームによると、S&P総合500種に占めるエネルギーの比重は少なくとも1995年以来の最低に落ち込んでいる。原油価格が過去最高値圏の1バレル=140ドル超だった20008年半ばに15%を超えていた比重は、5%を割り込んでしまった。
歴史的にエネルギー株は原油価格は連動してきたが、今年は原油価格にさえ出遅れている。
これほどの低迷ぶりから、特に配当面で魅力があるエネルギー株については近く底を打って反発する予定があると期待する声が聞かれる。ただ、本当にそうなるかどうかは分からない。
グリーンウッド・キャピタルのウォルター・トッド最高投資責任者は「エネルギーセクターに対する全般的な見方は、機関投資家が資産に組み入れるのが非常に難しい地点に達してしまった。なぜなら株価が慢性的にアンダーパフォームしてきたからだ」と述べた。
S&P総合500種は、09年3月の強気相場入りから足元までに300%強上昇している。半面、エネルギー株の上昇率は32%にすぎない。
この間、原油価格もほとんど上がらなかったが、今年になると18%余り上昇して54ドル前後に達したにもかかわらず、エネルギーは3%下落した。
トッド氏は「過去18─24か月に目を向けると、エネルギー株がここまでいら立ちを覚えるような動きになっている理由は、原油が値上がりしてもエネルギー株は本来そうあるべき幅で上昇せず、逆に原油が下がれば、値崩れしてきたからだ」と説明した。
トランプ政権は、エネルギーやその他天然資源関連企業向けの規制緩和を追求しているが、エネルギーセクターの苦戦は続いている。
サウス・テキサス・マネー・万ジメントのクリスチャン・ルドゥー最高投資責任者は「規制を取り除けば、掘削が増えて供給が拡大し、それは価格が下がることを意味する」と指摘した。
米中貿易摩擦の激化を受け、米国債市場で景気後退到来のサインとされる長短金利逆転(逆イールド)が発生するなど、景気の先行きが不安視されていることも、エネルギー株に痛手となりかねない。
アリアンツ・グローバル・インベスターズのポートフォリオマネジャー、バーンズ・マッキニー氏はエネルギー株について「景気敏感な分野なので、恐らく貿易戦争懸念の最大の犠牲者の1つになるだろう」と話した。実際23日に米中両国が追加関税の応酬を行うと、エネルギー株はアンダーパフォームしている。
また一部の投資家は、エネルギー企業が気候変動に悪影響を及ぼすのではないかと考え、化石産業向け投資を敬遠するようになった。シモンズ・エナジーのマネジングディレクター、ピアース・ハモンド氏は「石油・ガス企業は多くの投資家にとって、多少のけ者扱いされるようになっている」と述べた。
シティグループの株式ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏は、S&P総合500種との比較で02年以降最も値ごろ感が出ている点を挙げて、エネルギーセクターの投資判断を「オーバーウエート」にしている。それでも最近のリポートで「大きな供給面の混乱がないエネルギーセクターに投資家を呼び戻すきっかけを見つけるのに苦労している」と認めた。
また一部エネルギーには、米国債利回りが急低下する中で高配当を維持しているという魅力がある。足元の10年債利回りが1.54%なのに対して、エクソンモービル (N:XOM)の配当利回りは5%、オキシデンタル・ペトロリアム (N:OXY)に至っては7%だ。
しかしスレートストーン・ウェルスのチーフ投資ストラテジスト、ロバート・パブリク氏は、エネルギーセクターの投資判断をややアンダーウエートとしており、株価上昇で利益確定ができるなら、保有するエネルギー株を売却する可能性があると明らかにした。
同氏は「エネルギー株に大幅な上昇余地があるとは思わない」と語る。
(Lewis Krauskopf記者)