[ロンドン/パリ 4日 ロイター] - フランスのデジタル課税への対抗措置として米政権がハンドバッグからシャンパンに至るフランス製品への報復関税を検討していることによって、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン) (PA:LVMH)やケリング (PA:PRTP)などの大手高級ブランド株が受ける打撃は軽微にとどまることが今週、判明した。投資家は長年にわたって愛着心を示してきた高級ブランド株を手放すことを拒んでいるためだ。
ウォール街で巨大情報技術(IT)企業のフェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、アルファベット傘下のグーグル(FAANG)が先駆者として注目されているように、欧州大陸の取引所では欧州の高級ブランド各社が脚光を浴びる。
株式アナリストは、エルメス (PA:HRMS)などの高級ブランド株の魅力は、米政権がフランス製品への報復関税を検討する中でも、弱まることはないと考えている。
時価総額が2000億ユーロ(2200億ドル)を超えるLVMHはユーロネクスト・パリでは企業価値を最も高く評価された銘柄であり、評価額は大手航空機メーカーであるエアバスの2倍に相当する。
フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、アネタ・ウィニムコ氏によると、LVMHは昨年、売上高の24%を米国で稼ぎ出したが、米国のフランスに対する報復関税が発動された場合に営業利益への影響は6%程度にとどまるという。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの株式ストラテジスト、クラウディア・パンセリ氏は「報復関税は対処可能だ」と指摘、フランスの高級ブランドの売上高総額から判断して「影響は小さい」との見方を示した。
グッチやイブ・サンローランのブランドを保有するケリングは時価総額が680億ユーロとLVMHより低いが、ユーロ圏の最大手級銀行であるBNPパリバを上回っている。
ケリングとLVMHは過去10年間で株価が6倍超に上昇した。その間、ユーロSTOXX指数は3分の2程度の上昇にとどまっている。
端的に言えば、欧州の株式市場でフランスの高級ブランド株は、ウォール街におけるFAANGと同様に位置付けられているのだ。
LVMHとケリングの両銘柄はバリュエーションから判断すると割高になっている。12カ月後の業績見通しに基づく株価収益率(PER)は、LVMHが約24倍で、STOXX欧州600指数 (STOXX)全体の14.7倍を大きく上回る。
スタンホープ・キャピタルのジョナサン・ベル最高投資責任者はLVMHについて「FAANG株と同様、高い株価収益率は当然だ」と述べた。
米政権のフランスに対する報復関税の検討は株価を数パーセント下げたが、ベル氏は株価への影響が一時的にとどまりそうだとみている。
同氏は「長期的にはLVMH株主の大半は、コカ・コーラ株を保有するウォーレン・バフェット氏のような存在であり、買った株を長期にわたって保有し続けると思う」と話した。
LVMHとケリングの売上高は、米国の買い物客よりも中国の新世代買い物客の高級ブランドに対する購入意欲に左右される度合いが大きい。
ウィニムコ氏は、強い価格決定力が高級ブランドを保護していると指摘。「バーキンのハンドバッグを3年間も待っていた人が、入手できるようになった際、500ドルの追加費用が必要になったからといって、『関税がかかるから買わない』と言うとは思えない」と語った。
エルメスの高級ハンドバッグであるバーキンは価格が1万ドルを超え、注文してから入手するまで長期間待たされることが多い。