[東京 9日 ロイター] - 9日の東京株式市場でソフトバンクグループ(SBG)株が大幅に売られ、一時前営業日比5%安に迫った。前日に発表した2023年3月期第1・四半期(4─6月期、国際会計基準)の最終損益が、四半期として過去最大となる3兆1627億円の赤字になったことが嫌気されている。
この日は日経平均株価も約1%安と軟調に推移したが、ソフトバンクG株はそれを大きく上回って下落した。同社は傘下のビジョン・ファンドを通じて新興のハイテク企業に出資。金融引き締め局面で世界的にグロース株が軟調に推移する中、「ユニコーン企業のエグジットがしやすい環境とはまだ言えない」と、松井証券の窪田朋一郎投資メディア部長は話す。
ソフトバンクGの孫正義会長は会見で、ユニコーン企業の経営者は高い企業評価額を求める傾向があり、「(ユニコーン企業が)上場すると、株式市場で売り込まれ、初めて目が覚めることがたくさんあるが、残念ながら経営者たちは会社の価値を下げることを受け入れない」と述べた。未上場のユニコーン企業の投資機会が減る中、「投資環境の冬」は今後も続くとの認識を示している。
最終赤字は2四半期連続。ビジョン・ファンドの投資損失が2兆9191億円に膨らんだほか、円安で国内会社の米ドル建て純負債が増加し、為替差損8200億円を計上した。また、孫会長は会見で、新規投資を控え、人員を削減する方針を示した。
SBI証券企業調査部の森行眞司氏は、既存の投資先には潜在性の高い銘柄が多い上、英半導体設計大手のアームなど有力事業も抱えていると語る。「市場がいったん鎮静化すれば、グロース株の戻りも大きいだろう。そのとき、改めてどう評価するかが重要なのではないか」という。
松井証券の窪田氏は同社株の見通しについて「強弱感が対立しそうだ」とみる。「業績悪化はある程度織り込まれているほか、自社株買いも発表し株主への一定の配慮を示した。信用買い残は整理されてきており、投げ売りする投資家も少ないのではないか」と予想する。
(佐古田麻優、平田紀之、久保信博)