■要約
窪田製薬ホールディングス (TYO:4596)は「世界から失明を撲滅する」をビジョンに掲げ、革新的な医療デバイス及び眼疾患治療薬の開発を進めている。
主な開発パイプラインは、近視の進行を抑制または改善させる効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」と加齢黄斑変性等の網膜疾患患者向け在宅・遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」、増殖糖尿病網膜症を適応症とした治療薬候補品「エミクススタト塩酸塩」の3品となる。
1. ウェアラブル近視デバイスの動向
近視の大半は軸性近視という、眼軸長※1が伸びることによって網膜にピントが合わなくなることで視力が低下するメカニズムである。
「クボタメガネテクノロジー」はAR(Argument Reality:拡張現実)技術によって、Myopic defocus(近視性デフォーカス)という周辺網膜より手前にピントを合わせた画像を投影することで、伸びた眼軸長を短縮する技術である。
他社先行品で自然光を特殊(多焦点)コンタクトレンズに通すことでMyopic defocusの状態を作り出す製品があるが、効果を得るためには同コンタクトレンズを1日10~12時間程度、装着する必要がある。
一方、「クボタメガネ」は1日1~1.5時間の装着で眼軸長が短縮することが実証試験で確認されており、効率的に近視の進行を抑制できる可能性がある技術として注目されている。
同技術を用いた「Kubota Glass」が2022年6月に米国FDA(米国食品医薬品局)にて医療機器として登録され販売を開始したほか、日本でも同年8月より眼科医及び複数の小売店で販売を開始した(販売価格は税込77万円)。
まだソフトローンチ※2の段階で、今後は臨床試験によるエビデンスの積み上げと製品改良に取り組み、最終的には近視進行抑制デバイスとして販売承認を取得し、世界各国で販売することを目指している。
近視人口は年々増加傾向にあり、同社は潜在的な市場規模として2030年までに全世界で最大1兆3千億円になる可能性を有していると見ている。
今後は近視抑制デバイスとして販売承認の取得、低コスト化の実現が普及拡大のカギを握るものと見られ、その動向が注目される。
※1 角膜から網膜までの長さ。
成人の場合、平均約24mmで、1~2mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまうため、遠くが見えにくくなる(=近視)。
※2 製造から販売、配送、アフターケアまでのプロセスにおけるトラブルシューティング及びマーケットフィットの検証を目的としたテスト販売。
2. その他主要パイプラインの動向
遺伝性網膜疾患であるスターガルト病を適応症として進められてきた「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験に関するトップラインデータを2022年8月に発表した。
主要評価項目であった黄斑委縮の進行率で、プラセボ群との有意差が得られなかったことから同適応症での開発は終了した。
今回の臨床試験の結果を詳細に検証し、糖尿病網膜症など他の疾患での共同開発パートナーを探索するとともに、今後の開発計画に対して改めて検討することにしている。
「PBOS」については、2022年1月から国内の医療機関で実施していた小規模の性能確認試験が終了し、おおむね良好な結果が得られたもようで、今後担当医師がその詳細について学会等にて随時発表していく予定である。
同社はエビデンスをもってパートナー候補先企業と協議を進め、米国での共同開発や商業化を目指す方針だ。
3. 業績動向
2022年12月期第2四半期累計(2022年1月~6月)の連結業績は事業収益の計上がなく、営業損失で1,172百万円(前年同期は1,335百万円の損失)となった。
研究開発費や一般管理費の減少が営業損失額の縮小要因となった。
2022年12月期の業績は期初計画を据え置いており、事業収益の計上がなく、営業損失で2,000百万円(同2,584百万円の損失)を見込んでいる。
通期でも研究開発費の減少が営業損失の縮小要因となる。
なお、事業収益については「Kubota Glass」の今後の販売状況次第となるが、まだソフトローンチの段階であるため売上高としては小規模なものにとどまると予想される。
2022年12月期第2四半期末の手元資金は4,193百万円で、約2年分の事業活動資金を確保しているものの、まだ開発ステージの段階にあるため必要資金を確保すべく、2022年9月5日付けで第三者割当による新株予約権を発行した。
潜在発行株式数は1,000万株で8月末の発行済株式数に対して希薄化率は19.5%となる。
調達資金使途は、「Kubota Glass」や「PBOS」の開発・製造費及び営業・マーケティング費用等で、とりわけ「Kubota Glass」にリソースを投入する考えだ。
■Key Points
・「世界から失明を撲滅する」をビジョンに掲げ、先進テクノロジーを活用した革新的な医療デバイスや治療薬の開発に挑む
・「Kubota Glass」を日米で販売開始、今後も製品改良や臨床試験によるエビデンスを積み上げ育成する方針
・「PBOS」は国内で第三者機関による性能確認試験が完了、パートナー契約締結に向けた交渉を継続
・第三者割当による新株予約権を発行し、ウェアラブル近視デバイス等の先行投資費用を調達
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
窪田製薬ホールディングス (TYO:4596)は「世界から失明を撲滅する」をビジョンに掲げ、革新的な医療デバイス及び眼疾患治療薬の開発を進めている。
主な開発パイプラインは、近視の進行を抑制または改善させる効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」と加齢黄斑変性等の網膜疾患患者向け在宅・遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」、増殖糖尿病網膜症を適応症とした治療薬候補品「エミクススタト塩酸塩」の3品となる。
1. ウェアラブル近視デバイスの動向
近視の大半は軸性近視という、眼軸長※1が伸びることによって網膜にピントが合わなくなることで視力が低下するメカニズムである。
「クボタメガネテクノロジー」はAR(Argument Reality:拡張現実)技術によって、Myopic defocus(近視性デフォーカス)という周辺網膜より手前にピントを合わせた画像を投影することで、伸びた眼軸長を短縮する技術である。
他社先行品で自然光を特殊(多焦点)コンタクトレンズに通すことでMyopic defocusの状態を作り出す製品があるが、効果を得るためには同コンタクトレンズを1日10~12時間程度、装着する必要がある。
一方、「クボタメガネ」は1日1~1.5時間の装着で眼軸長が短縮することが実証試験で確認されており、効率的に近視の進行を抑制できる可能性がある技術として注目されている。
同技術を用いた「Kubota Glass」が2022年6月に米国FDA(米国食品医薬品局)にて医療機器として登録され販売を開始したほか、日本でも同年8月より眼科医及び複数の小売店で販売を開始した(販売価格は税込77万円)。
まだソフトローンチ※2の段階で、今後は臨床試験によるエビデンスの積み上げと製品改良に取り組み、最終的には近視進行抑制デバイスとして販売承認を取得し、世界各国で販売することを目指している。
近視人口は年々増加傾向にあり、同社は潜在的な市場規模として2030年までに全世界で最大1兆3千億円になる可能性を有していると見ている。
今後は近視抑制デバイスとして販売承認の取得、低コスト化の実現が普及拡大のカギを握るものと見られ、その動向が注目される。
※1 角膜から網膜までの長さ。
成人の場合、平均約24mmで、1~2mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまうため、遠くが見えにくくなる(=近視)。
※2 製造から販売、配送、アフターケアまでのプロセスにおけるトラブルシューティング及びマーケットフィットの検証を目的としたテスト販売。
2. その他主要パイプラインの動向
遺伝性網膜疾患であるスターガルト病を適応症として進められてきた「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験に関するトップラインデータを2022年8月に発表した。
主要評価項目であった黄斑委縮の進行率で、プラセボ群との有意差が得られなかったことから同適応症での開発は終了した。
今回の臨床試験の結果を詳細に検証し、糖尿病網膜症など他の疾患での共同開発パートナーを探索するとともに、今後の開発計画に対して改めて検討することにしている。
「PBOS」については、2022年1月から国内の医療機関で実施していた小規模の性能確認試験が終了し、おおむね良好な結果が得られたもようで、今後担当医師がその詳細について学会等にて随時発表していく予定である。
同社はエビデンスをもってパートナー候補先企業と協議を進め、米国での共同開発や商業化を目指す方針だ。
3. 業績動向
2022年12月期第2四半期累計(2022年1月~6月)の連結業績は事業収益の計上がなく、営業損失で1,172百万円(前年同期は1,335百万円の損失)となった。
研究開発費や一般管理費の減少が営業損失額の縮小要因となった。
2022年12月期の業績は期初計画を据え置いており、事業収益の計上がなく、営業損失で2,000百万円(同2,584百万円の損失)を見込んでいる。
通期でも研究開発費の減少が営業損失の縮小要因となる。
なお、事業収益については「Kubota Glass」の今後の販売状況次第となるが、まだソフトローンチの段階であるため売上高としては小規模なものにとどまると予想される。
2022年12月期第2四半期末の手元資金は4,193百万円で、約2年分の事業活動資金を確保しているものの、まだ開発ステージの段階にあるため必要資金を確保すべく、2022年9月5日付けで第三者割当による新株予約権を発行した。
潜在発行株式数は1,000万株で8月末の発行済株式数に対して希薄化率は19.5%となる。
調達資金使途は、「Kubota Glass」や「PBOS」の開発・製造費及び営業・マーケティング費用等で、とりわけ「Kubota Glass」にリソースを投入する考えだ。
■Key Points
・「世界から失明を撲滅する」をビジョンに掲げ、先進テクノロジーを活用した革新的な医療デバイスや治療薬の開発に挑む
・「Kubota Glass」を日米で販売開始、今後も製品改良や臨床試験によるエビデンスを積み上げ育成する方針
・「PBOS」は国内で第三者機関による性能確認試験が完了、パートナー契約締結に向けた交渉を継続
・第三者割当による新株予約権を発行し、ウェアラブル近視デバイス等の先行投資費用を調達
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)