■決算概要
3. 事業リカバリーの方向性と取り組み
ワコム (TYO:6727)では、「ブランド製品事業」(中低価格帯モデル)の落ち込みについて、経済環境悪化に伴う購買優先度の低減及びコロナ特需の落ち着きといった外部要因に加え、販路マネジメントや商品ポートフォリオなど内部要因にも改善すべき余地があるとの認識に立ち、1)B2B及び自社オンラインストアの強化、2)はく落した市場需要の再開拓(一般教育やクリエイティブ教育、DX等)、3)商品ポートフォリオの刷新継続、4)新価値提供/新ビジネスモデルの開始に取り組む方針としている(上記3と4は従来からの継続案件)。
ただ、後述する中期経営方針「Wacom Chapter 3」の戦略方向に変更はない。
また、足元業績の下振れに伴い、「Wacom Chapter 3」の成長のイメージについてはアップデートする予定としている。
すなわち、経済環境悪化の影響等により今後の成長イメージに時間的な遅れが生じたため、2024年3月期からのターンアラウンドを目指すとともに、「Wacom Chapter 4」に突入する2026年3月期以降で2ケタの営業利益率を達成し、維持していく事業構造を実現するシナリオのようだ(当初イメージより約2年の遅れ)。
なお、修正プランについては、1次報告、2次報告(2023年3月期決算発表時)の2回に分けて開示する予定である。
4. 2023年3月期上期の総括
以上から、2023年3月期上期を総括すると、「ブランド製品事業」(中低価格帯モデル)の想定を超える減速をどう評価するかに尽きるだろう。
コロナ特需のはく落はある程度予想できたものの、消費マインドの冷え込みによる影響が、流通在庫調整の動きを含めて、想定以上に急激かつ大きかった。
特に中低価格帯モデルにおける市場特性として、インフレ進行の初期段階では所得水準が相対的に低い層になるほど消費マインドが左右されやすく、購買優先度も比較的低くなりがちなことを勘案すれば、景気循環的な影響はある程度やむを得ないとの見方もできる。
もっとも弊社では、取引先(OEM提供先メーカー)からの評価の高さや搭載実績、各パートナーとの協業の動きなどから判断して、デジタルペンや同社技術に対するポテンシャルの大きさ自体の評価を変える必要はないと見ている。
したがって、いかに自社ブランドにて景気循環的な影響を受けない市場を掘り起こしていくのかが今後の課題と言えるだろう。
同社が事業リカバリーの方向性として、とりわけ市場の大きな一般教育分野やクリエイティブ教育分野の取り込み、あるいはユーザーの裾野拡大に向けて、チャネル強化を含め、しっかりとユースケースの開拓や体験型アプローチをかけていくことをテーマに掲げたところは、まさに基盤となる市場の創出や育成を目指すものであり、改めて今後やるべきことを再確認できたという点においては前向きに評価したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
3. 事業リカバリーの方向性と取り組み
ワコム (TYO:6727)では、「ブランド製品事業」(中低価格帯モデル)の落ち込みについて、経済環境悪化に伴う購買優先度の低減及びコロナ特需の落ち着きといった外部要因に加え、販路マネジメントや商品ポートフォリオなど内部要因にも改善すべき余地があるとの認識に立ち、1)B2B及び自社オンラインストアの強化、2)はく落した市場需要の再開拓(一般教育やクリエイティブ教育、DX等)、3)商品ポートフォリオの刷新継続、4)新価値提供/新ビジネスモデルの開始に取り組む方針としている(上記3と4は従来からの継続案件)。
ただ、後述する中期経営方針「Wacom Chapter 3」の戦略方向に変更はない。
また、足元業績の下振れに伴い、「Wacom Chapter 3」の成長のイメージについてはアップデートする予定としている。
すなわち、経済環境悪化の影響等により今後の成長イメージに時間的な遅れが生じたため、2024年3月期からのターンアラウンドを目指すとともに、「Wacom Chapter 4」に突入する2026年3月期以降で2ケタの営業利益率を達成し、維持していく事業構造を実現するシナリオのようだ(当初イメージより約2年の遅れ)。
なお、修正プランについては、1次報告、2次報告(2023年3月期決算発表時)の2回に分けて開示する予定である。
4. 2023年3月期上期の総括
以上から、2023年3月期上期を総括すると、「ブランド製品事業」(中低価格帯モデル)の想定を超える減速をどう評価するかに尽きるだろう。
コロナ特需のはく落はある程度予想できたものの、消費マインドの冷え込みによる影響が、流通在庫調整の動きを含めて、想定以上に急激かつ大きかった。
特に中低価格帯モデルにおける市場特性として、インフレ進行の初期段階では所得水準が相対的に低い層になるほど消費マインドが左右されやすく、購買優先度も比較的低くなりがちなことを勘案すれば、景気循環的な影響はある程度やむを得ないとの見方もできる。
もっとも弊社では、取引先(OEM提供先メーカー)からの評価の高さや搭載実績、各パートナーとの協業の動きなどから判断して、デジタルペンや同社技術に対するポテンシャルの大きさ自体の評価を変える必要はないと見ている。
したがって、いかに自社ブランドにて景気循環的な影響を受けない市場を掘り起こしていくのかが今後の課題と言えるだろう。
同社が事業リカバリーの方向性として、とりわけ市場の大きな一般教育分野やクリエイティブ教育分野の取り込み、あるいはユーザーの裾野拡大に向けて、チャネル強化を含め、しっかりとユースケースの開拓や体験型アプローチをかけていくことをテーマに掲げたところは、まさに基盤となる市場の創出や育成を目指すものであり、改めて今後やるべきことを再確認できたという点においては前向きに評価したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)